名残りのアケボノツツジ −四国・西赤石山−
(2013.05)

 昨年のゴールデンウィークに九州の大崩山から傾山、祖母山へ縦走し、満開のアケボノツツジを満喫したのだが、今年は四国でアケボノツツジをみたいと思った。
 5月19日、故郷の阿波池田で所用があったのでその夜は新居浜で一泊し、翌朝別子銅山遺跡のある東平(とうなる)まで車でのぼり、西赤石山への登山を開始した。足弱の家内を同行しての山行である。東平は東洋のマチュピチュと自称しているが、それ程のものではないにしても往時の繁栄を偲ばせる煉瓦造りの建造物が残っている。
 幸い天候は晴れである。アケボノツツジがまだ残っているか心配であるが。
 登りは兜岩を通るコースを取る。家内がバテないようにゆっくりゆっくり登ってゆく。今日の登りは丁度標高差900mである。樹林帯を300m程急な坂を登ると軌道跡のような平らな広い道に出る。1kmほど軌道跡を辿り、桧の植林の中、尾根筋を登ってゆく。風は通らないが、ゆっくり登るのでさほど暑くもない。
 樹林帯が終わるころ、道ばたにはアケボノツツジの花びらが点々と落ちている。やがて西赤石山の頂上が見えてくる。山頂近くの山腹がピンクに染まっている。二人とも疲れが吹っ飛び、足が速くなる。
 兜岩。少し早いが昼飯にしよう。てっぺんの岩に腰を下ろし、涼風に吹かれながら、展望を楽しむ。遙か彼方のピークは石鎚山だろう。それから瓶ヶ森、笹ヶ峰、平家平と続いている。しかし、何よりも眼前の西赤石山腹のアケボノツツジが素晴らしい。
 100m程登ると山頂である。今日は月曜日とあって、登山客は少ない。山頂には他に二人の登山者が休んでいるだけだ。
 下りは反対側、銅山越に向かって下る。路傍のアケボノツツジを愛でながら。右手、下の方には登山口の東平の建物群が見える。東側のなだらかな斜面に点々と立つ小さな針葉樹の緑が美しい。下るにつれ、ムシカリの白い花、トサノミツバツツジの赤紫の花が現れる。下りの道はなだらかだが長い。やっと、銅山越だ。この辺りではツガザクラの白い小さな花が満開だ。ここはこの植物の南限地とのこと。峠には石の地蔵さんがまつられている。ここは江戸時代から銅鉱石を担いだ人夫が東の谷から東平の方へと越えていった道だ。
 なだらかで広い道を東平へと急ぐ。二時間ほどで登山口に到着。楽しい、印象深い山行だった。
 

       
 東平(別子銅山産業遺産群) 軌道跡  西赤石山頂   山腹のアケボノツツジ
       
兜岩  石鎚山を望む   アケボノツツジ 眼下の東平 
       
 新緑の谷  ムシカリ アケボノツツジ  トサノミツバツツジ 
       
 点々と立つ針葉樹  ツガザクラ 銅山越  下山路からの西赤石山