中国地方サイクリング(美作大原〜備後庄原・脊梁山脈を縫って)
(日本やまんなか縦断バリエーション: 2013.11)
九月に中国地方へサイクリングに出かけたが、雨に降られて人形峠から三朝温泉への僅か一日ちょっと走っただけで終わり、物足りない思いが残った。それと日本山ん中縦断では美作大原から備後庄原の間がR429を走る目的があったため脊梁山脈からだいぶ南の方に外れている。今回はこれを修正しよう。
11月16日からの週末の天気予報もすっきりはしないが、次の週になると雪の恐れがある。
11月16日(土)
午前9時過ぎ、智頭急行大原駅に降り立つ。ここは以前、R429を走ったとき、経由したところだ。今回はここからR373を北へ向かう。岡山吉井川の支流、吉野川という小さい川に沿って広がる農地の中を走ると西粟倉だ。温泉があるらしい。やがて志戸坂トンネル。ここは自動車専用道なので横の幅広い歩道を走る。ここで鳥取県に入るともに、第一回の脊梁山脈越えだ。残念ながらここには峠越えの車道はないようだ。
トンネルを抜けると千代川の源流である。この川は鳥取市で日本海に入る。川沿いの道を快調に下る。智頭往還と書いた立て札があり山道が国道沿いに続いている。ここは山陽と山陰を結ぶ重要な街道だったようだ。智頭の町に入る。大阪の人間にとって智頭と言えば美味しい智頭豆腐の町としか知識がないが、本陣跡がある昔の宿場町だ。この町の目玉である国重要文化財の山谷家住宅を見学する。豪壮な住宅と美しい庭園、書画などを見て回る。
智頭急行大原駅 | 吉野川に沿って走る | 志戸坂トンネル |
山谷家屋敷 | 山谷家庭園 | 智頭宿 |
先を急ぐので、智頭の町はこれだけにして物見峠へと向かう。途中の看板に工事中で8時から5時まで通行止めとあったが、自転車は何とかしてくれるだろうと高をくくって進む。快調に上って峠まであと30分ぐらいのところまで来たところで通行止。若い兄ちゃんが一人立っていて、自転車どころか歩行者も通さないと頑張る。今二時過ぎだから後三時間もあるが引き返すわけにも行かない。傍の東屋でシュラフを出して昼寝をするしかない。こんなことなら智頭の町でゆっくりすればよかった。東屋があるだけになかなかの展望だ。眼下に登り口の集落、正面に篭山(905m)が聳え登山意欲をそそる。西日がシュラフを暖めて気持ちがいい。3台ほど車が上ってきたが全部追い返される。それにしても、あの兄ちゃん、朝8時から坐りもせずずっと立ちづめで張り番だ。ある意味重労働だ。小生など退屈で死ぬだろう。
4時半、やっと解除となる。長時間の休憩で足は軽い。難なく峠に到着するが、もう薄暮だ。これで二つ目の脊梁越えだ。岡山県に戻る。しかし何でここが日本の峠百選に入るのかよく判らない。キャンプサイトを探しながら下ってゆく。物見の集落が黒い影になって見えるところで少し山側に上ってテントを張る。ジメジメしてあまり気分がよいところではないがやむを得ない。予定では加茂の町で食料を仕入れるつもりだったので、予備のため持ってきたアルファ米と乾燥カレー、缶詰一つの夕食となる。酒もない。
夜、冷え込みがきつい。
展望台から(正面は篭山) | 夕暮れの物見峠 |
11月17日(日)
黎明、朝霧の中、加茂の町へと走る。寒い。紅葉が美しいが写真を撮るには暗い。美作加茂駅で一休み。加茂の地名は全国に多くあるが、ここは山間ながら広々と農地が広がる気持ちのよいところだ。近くのコンビニで厚い手袋を買う。
北西に向かって山中に入ってゆく。22世紀の森。昨日の通行止がなかったらこの辺りでキャンプしていただろう。少し上の峠(640m)を越え、ちょっと下ると越畑、たたらで栄えた集落らしい。更に西へと新しく綺麗に舗装された道路を笠菅峠へと登って行く。国道179と記してある。最近国道に昇格したのかな? しかし、なかなか登りごたえのある坂だ。笠菅峠(850m)到着。尾路、大神宮原を経て奥津温泉まで快適な下りだ。
県道75を行く | 津山市加茂町と苫田郡鏡野町の境の峠 | 越畑への下り |
笠菅峠への登り | 笠菅峠 | 峠の下り(尾路) |
奥津温泉。今日は日曜日とあって、行楽客で賑わっている。素通りして奥津渓を下る。ここも人が多いが、今年の紅葉はあまり綺麗ではない。
奥津渓谷 |
羽出西谷川を遡る。長い村道を最奥の若曽まで300mの登りで結構辛い。しかし本当に苦しいのはここからだった。コースの計画を立てたときに使ったのは道路地図だったので標高は考えていなかった。ちょいとした登りと考えていたが、今回の最高到達点(930m)だった。峠手前のヘアピンカーブが登り切れず押して上る。ここから300m程は歩いてしまった。登れない坂ではないのだが、体力の衰えを実感する。
目の覚めるような紅葉の中、山乗渓谷の激下りをそろそろと下りて行く。
羽出西谷川の集落 | 峠への登り | 登ってきた谷を振り返る |
峠 | 山乗渓谷の紅葉 |
下りきると蒜山だ。蒜山は自転車では走ったことないが、何度も来ているので今回は国道を一直線に西へ進む。途中、スーパーで今夜の食料と酒を買い、道の駅でジャージー牛乳を飲んだだけ。蒜山の西の端、内海乢(640m)で岡山県から再び鳥取県に入る。三番目の脊梁越えだ。ここは江府町というらしい。もう5時近い。キャンプサイトを探しながら下ってゆく。下蚊屋ダムの対岸に東屋が見える。あそこにしよう。ダムの上は通行禁止と書いてあるが、ちょっと通してもらう。夜から雨となる。風もだいぶ強い。屋根の下にテントを張って、正解だった。
内海峠近く | 内海峠 |
11月18日(月)
小雨の中、坂を下って江尾で日野川本流に出る。ここからR183で日野川を遡り広島県に出る比較的単純なコースだ。道路標識を見ると気温4℃だ。雨具は完璧で内部が濡れることはないが、氷雨の寒気が滲み通る。しばらく走ると日野町根雨だ。オシドリで有名なまちだ。川には数多くのカモに混じってオシドリが幾羽か泳いでいる。観察小屋によってみるが残念ながら直下の流れには一羽もいない。遠くの姿を見ることが出来だけだ。
日野川 | 根雨宿 | オシドリ |
この辺り国道はJR伯備線に沿って走っているが、生山(しょうやま)で伯備線と別れ日野川本流を遡ってゆく。日野川もドンズマリに近づき多里という集落に入る。ここは見覚えがある。20年近く前、安来から帝釈峡に自転車で抜けたときに通った。多里から鍵掛(かっかけ)峠に上るのだが、きつい坂道を上ったという記憶はないからたいしたことはないだろう。標高500mから750mまで4キロの登りだ。あれからだいぶ年をとったせいか、雨の中の雨具を着ての登りのせいか、なかなかきつい登りではないか。峠近くまで上ってくると雨は雪に変わる。やっと峠にたどり着く。車の通りも殆どなく、寂しい佇まいだ。この峠で四番目の脊梁越えだ。ここから広島県で成羽川の源流となる。正面に猫山のスキーゲレンデが白く冠雪している。もう冬の始まりだ。
日野川沿いの集落 | 日野川最奥の集落 | 鍵掛峠への登り |
鍵掛峠 | 猫山スキー場 | 猫山 |
少し下るとたいした登りもなく、江の川の支流、西城川源流に移る。第五番目の脊梁越えだ。備後落合まで下ってくると雨が激しくなる。寒い。どこか喫茶店か、うどん屋で雨宿りと思うがあいにくの山中で何にもない。この調子では西城あたりでギブアップかなと考えながら走っていくと、幸い西城で雨が上がり青空が見えてきた。
後は西城川に沿って庄原までひたすらに走る。
予定ではもう一泊して、広島か福山まで走ろうかと思っていたが、もうこれが限界。初期の目的は果たしたので十分満足した旅でした。