紀伊半島縦断 −国道371号線サイクリング−
(2014.11.15〜17)
紀伊半島を縦断する国道といえば、奈良市から大和上市・紀ノ川・北山川に沿って和歌山県新宮市(途中から三重県熊野市に出る方が便利)に到る国道169号線と奈良県五條市から十津川沿いに和歌山県新宮市に到る国道168号線がよく知られているが、実はもう一つ国道371号線というのがある。大阪府河内長野市を起点として紀伊山中を南下して本州最南端の和歌山県串本市に終わる200km以上のルートで途中二カ所途切れた部分があるいわゆる酷道の一つである。
この秋、これを走破しようと計画したが体調不良や週末の天候不良で延び延びになっていた。急がないと雪になってしまうと、11月中旬に決行した。
11/15(土) 寝過ごしたり、忘れ物を取りに帰ったりして大幅に遅れて、河内長野を出発したのが9時になってしまった。市内に残る旧高野街道を走るが、すぐにR371に入り交通量の多い道を紀見峠に向かう。南海高野線の天見駅を過ぎて少し登ると国道は紀見トンネルを抜けるがここは当然旧街道を越える。大した登りではない。紀見峠には昔を偲ばせる石碑がいくつか立っている。中の一つにに岡潔生誕の地の碑がある。先生はここで生まれたのか。 峠を下り、橋本の街を抜け紀ノ川を渡れば、R371は狭い道となり急な坂道を山中へと入ってゆく。標高400mを越えたところで200m程下って丹生川に出る。また登り返さねばならぬのでこの下りは悔しい。丹生川の渓流に沿って高野山を目指す。青空、紅葉、清流の取り合わせが気持ちよい。
高野山まで12km、600mの登りだ。丹生川の本流から支流にはいると急登となり、息が切れる。トンネルを抜けると中の橋に到着。もう2時だ。これでは龍神温泉までは行けない。今夜は高野龍神スカイラインの途中でテント泊になる。温泉に入れないのが残念。街中にたった一軒あるコンビニで食料を仕入れる。山上の町は住民は多そうなのに日用品を売る店が少なそうだ。皆どうしているのかな。
旧高野街道(河内長野市内) | R371から旧道に入る | 紀見峠 |
紀ノ川を渡る | 丹生川 | 丹生川の紅葉 |
隘路のR371 | 丹生川から和泉山脈 | トンネルを越えれば高野山 |
高野龍神スカイラインを南下する。高度が1000m位となり、もう名残の紅葉だ。風に落ち葉が舞う。ダラダラとした400mの登りに音を上げる。せめて箕峠までと思ったがもう5時近い。暗くなってきた。路傍の広場にテントを張る。
高野龍神スカイラインを走る |
夜通し、車やバイクの往来が絶えない。高速で走るため騒音がひどい。夜中、起き出すと満天の星。この前、オリオン座を眺めたのはいつのことだったか。足がつって痛い。甘草芍薬散2包と塩分補給のため干し梅をかじる。
11/16(日)6時、薄暗い中出発する。護摩壇まではまだ登りが続く。この辺り、道は右の有田川と左の十津川と何度も流域を変えるためアップダウンが激しい。2時間近くかかってようやく護摩壇の道の駅に到着する。
身を切られる冷たさの中の大下り1時間で龍神温泉に到着する。日射しがさしてようやく暖かくなってきた。今日はこの辺りで関西実業団の駅伝大会があり、沿道には大勢の応援団が出ている。相当大きな大会らしい。
龍神温泉を素通りして、日高川沿いの道を下ってゆく。途中で駅伝の選手たちと行き違う。先導の白バイが付いて、本格的なレースだ。20km程下ったところで、支流の丹生ノ川に入り、引牛越に向かう。この道は北側の牛廻越と並んで日高川と十津川を結ぶ重要な街道だ。
朝の高野龍神スカイライン | ||
護摩壇山、龍神岳? | 日高川 | 龍神温泉上御殿 |
日高川に沿って走る | 駅伝・ビリの選手かな | 丹生ノ川分岐点 |
R371は途中、恩行司で引牛越に向かう丹生ノ川と別れ南へ果無山脈を笠塔トンネルで越えて熊野街道中辺路に出る。国道は一部途絶えているが、林道で繋がっている。
ここで大失敗をする。恩行司の分かれ道を見落とし、何の気も無くトロトロと走り続け加財という集落まで来てしまった。立て札に右に入ると中辺路と書いてある。「これだな」と疑いもなく細い道を上り続けるうちにおかしいと気がついたが引き返す気もせずトンネルに到着した。大した登りではなかった。トンネルには坂泰隧道とある。この道は坂泰林道だ。トンネルを抜けると道は二つに分かれ、左は本宮方面、右は中辺路とある。どっちも通行止めの標識が出ている。おまけに中辺路方面は未舗装で自転車には辛い路面状態だが、ここまで来たら行くしかない。
そういえば思い出した。昔、果無山脈を縦走したとき、このトンネルのそばから尾根によじ登って笠塔山から持平山まで行ったのだった。
ガタゴト道をそろりそろりと10km程も下っただろうか。すっかり手が痺れたころやっと舗装道路に出た。この辺りは富田川の源流だ。しばらく下ると福定で中辺路の国道R311の出る。一走りしてR371との合流点に出た。R371を走るのに比べて、距離にして2倍、時間は3倍はかかっただろう。
丹生ノ川 | 果無山脈 和田森か? | |
坂泰林道を上る | 坂泰隧道 | 未舗装道の下り |
スーパーマーケットでバナナを買って昼食にする。それと今夜の酒とちょっとした副食を買い込む。
滝尻王子で支流の石船川に入り地蔵峠に向かう。峠を越えると日置川支流の巨鼇川を下り、本流に出る。そうか、ここから本流を遡れば近露王子に出るのだ。
清流で名高い日置川沿いにひたすら走って合川ダムに出る。もうそろそろ泊まりの場所を探さねば。三川大橋を渡って前ノ川に入る。有名な百間山渓谷への道を分けて少し進むとおおとう山遊館という建物がある。カヌー遊びの施設のようだ。ここは以前の小学校跡らしく広い運動場の跡がある。ここにしよう。空は雲に覆われている。明日は天気は下り坂のようだ。念入りにストレッチをやる。
滝尻王子 | 地蔵峠の地蔵さん | 近露王子への分岐点辺り |
日置川の清流 | 日置川 | キャンプサイト |
11/17(月) 標高150mの山間で暖かくぐっすりと寝られた。
7時出発。前ノ川に沿って徐々に高度を上げてゆく。ポツンポツンとあるいくつかの集落を過ぎて20km程行くと木守(こもり)集落の入り口に着く。ちょっと寄ってみよう。坂を登ると谷間ながら広々とした田畑跡が現れる。昔は数十戸ぐらいの農家はあったようだ。現在、知的障害者の福祉施設があって収容者と従業員で賑わっているようである。木守は隠るに通じるようで、のどかなちょっと桃源郷を思わせる地形である。
合川貯水池 | 前ノ川沿いの集落 | 前ノ川 |
木守の田畑 | 上木守集落 | 大根干し |
さて、国道に戻って少し行くとR371は小谷の中に消える。国土地理院の地形図に破線も付いていないので歩ける道があるかどうか。車道はここから林道木守平井線で反対側のR371に繋がる。林道の峠まで7km、300mの登りでまあ大したことはない。この辺りの主峰は昔登った大塔山だ。まあ、紀州の中でも最も奥深い場所と云える。
峠に着いたころパラパラと雨粒が顔に当たり出した。先を急ごう。下りは谷底の登り出しまで見える大下りだ。これは登りに取りたくはないな。
前ノ川渓谷 | 前ノ川渓谷 | 林道木守平井線の登り |
峠の石碑(東牟婁郡古座川町と西牟婁郡大塔村境) | 林道大下り | 路傍のミツバチの巣 |
古座川支流平井川を下り、再びR371となる。七川ダムで雨が少し強くなったのでレインコートを着ける。ひたすら古座川を下り一枚岩の奇勝で一休み。更に1km程下ったところでまた山に入り低いながら峠越えとなる。しかしここまで古座川を下ってきたのならそのまま下って古座を終点とすればいいのに。変な国道だね。
左は行き止まりのR371、右は下ってきた林道 | ゆずの里・平井 | 雨に煙る古座川 |
一枚岩 | 最後の串本町に入る | 潮岬遠望 |
2時、無事串本駅到着。全行程約250kmでした。
この旅は山の旅でもありまた川の旅でもありました。大和川、紀ノ川、有田川、十津川、日高川、富田川、日置川、古座川、そして最後に小川ながら高富川と九つの水系を辿りました。水系の変わるところには必ず峠があり、結構年寄りには堪える旅でした。