魔女の一撃
 新年最初の話題が怪我の話とはちょっと情けないのであるが、山もサイクリングも行けない状態となった以上は他に話題がないので、やむを得ない。
 しかし、このページでも今まで骨折やら、谷川での怪我やら、眼の角膜炎やら結構満身創痍といってもいいぐらいだ。 魁猿に言わせると小生は怪我の多いやつということになるが、私自身もよく生き延びてこられた正直思う。
 ぎっくり腰のことをドイツ語では「魔女の一撃」というらしいが、山歩きを始めた最初から単独行が多かったので、山中でぎっくり腰になったら怖いとは思っていた。滅多に人が通らない携帯も通じないような場所で、アイタタと倒れ、一歩も動けない状態となったら悲惨ではないか。それで、背筋、腹筋の強化はやってきたつもりだが、いつの間にかぎっくり腰のことなどは忘れてしまっていた。
 11月に大杉谷を歩いたことは既に書いたが 、その時西谷林道の岩石が崩落しているところを越えているとき、つまずいて前の岩で眼から火花が出るくらいひどく前頭部を打った。幸い手ぬぐいで鉢巻きをしていたので、外傷はなかったが「これは硬膜外血腫を作ったかも」と思った。しかし、その後は何ともなく粟谷小屋に帰って夕食にしたたか焼酎を飲んで寝た。
 翌日は上りは日出が岳まで2時間ぐらいだし、バスは午後三時だから東大台をゆっくり散策しても時間はもてあますぐらいある。ところが日出が岳へ向かって登り出すと、だんだん左大腿部の外側が痛み出した。普通2日で登るコースを3日もかけて登っているのに筋肉痛とはどういうことだ。「年取ったなー」と慨嘆しながら、コースタイムの倍ぐらいかかってようやく山頂に着いた。
 山頂で腰を下ろしていると何ともないが歩き出すと痛みがひどい。これは東大台の散策などやってられない、早くバス停まで行ってベンチで寝転んで休憩しよう。幸い快晴なので気持ちよい昼寝が出来るだろう。ようやくバス停まで辿り着く。
 ところがベンチに横になったとたん左腰全体に激痛が走った。「アイタタタ。」これはただの筋肉痛ではない。股関節に異常がおこったか? 体位や脚の位置を変えて何とか辛抱できる状態でバスの出発まで時間を過ごす。
 帰宅までのバスや電車で坐っているのは何ともないが、乗り換えが地獄だった。チンパンジーのように前屈みになると何とか前に進むことが出来る。まあ、情けない格好である。 翌朝、早速かかり付けの整形外科へ行く。大学の後輩なので気安く何でも相談できるS医師だ。早速、股関節のレントゲン、MRIを撮るが何ともない。とりあえず、鎮痛剤で様子を見ることにする。その日の夕方から、伊賀へ行って仕事。右足は何ともないので車の運転は平気、坐っているのもOKなので仕事も出来る。
 そのうち気がついてきたのは、痛みが一カ所でなく大腿部や臀部の方にいろいろ移ること、痛む筋肉を押さえても全く圧痛はないことから、筋肉の炎症ではなく腰から来る神経痛らしい。頭の働きの鈍い小生にも段々焦点が絞れてきた。
 翌週、早速腰のレントゲンとMRIを撮る。S先生は腰椎の上部L1〜3辺りで脊椎管が狭くなっているのと軽い椎間板ヘルニアが起こっているという。素人目にも脊椎管はだいぶ狭くなっているし、脊髄がグッと押されているのが見える。これが軽いヘルニアなの?だいぶひどいように見えるけれど。
そんなことで、S先生は数ヶ月たてば多分よくなるでしょうと云う。よくならなければその時は脊椎の後部を開いて脊椎管を拡げるということになった。そうすればまた山にも行けますと云われて一安心。
 椎間板ヘルニアは症状が治まれば、前科なしの無罪と同じですと云われたけれど、本当かな?