会津中街道と那須岳縦走
(2016.10)
昨年11月、大杉谷で椎間板ヘルニアになってから、徐々に回復して今年になって能登半島一周サイクリング、下北半島一周サイクリングをやってサイクリングはOKだと自信が付いたが、本格的な山はまだ行っていない。
それでお手軽な山行で自信をつけようと、那須岳登山を試みた。しかし、遠いところまで行くのだから、前後に歩きを入れて高低差は少ないが距離は長めに取ろうと今回に計画になった。それにこの辺りは温泉が多いのでこれも楽しみ。
10/12(水) 早朝、新大阪を出発して黒磯駅に着いたのが12時。駅前のスーパーで昼食と晩飯用の弁当と酒、朝食用に握り飯を買って板室温泉行きのバスに乗り込む。板室温泉に1時過ぎに着く。鄙びた温泉である。今日はここで泊まってもよかったのであるが、それでは4泊のうち3泊まで温泉泊まりとなりいくら何でも温泉に淫しすぎだろうと、今日は少し歩いて山中でテント泊の予定である。腰が心配なので、軽量化に心がけテントはテラ・ノバの軽量テント(580g)、シュラフカバー(最近お気に入りのEscape Bivvy) 、インナー(Thermolite Reactor) とエアーマットで寝袋無し。
2時板室温泉を出発して、舗装路を4kmほど歩いて乙女の滝に至る。特筆するほどの滝ではない。ここから会津中街道の古道に入る。会津と下野を結ぶ街道は古来大内宿などを経由する会津西街道がメインであったが、1683年の日光大地震で五十里湖が出来、街道が水没してしまった。それでこの会津中街道が代替街道として開かれたそうである。なかなか険しい道だが一時は会津の殿様の参勤交代にも使われたとのことだ。
会津街道の道標 | 板室本村(旧板室宿)のお堂 |
乙女の滝 | 林の中の道 |
ミズナラの林の中の道はなだらかに登ってゆく。ここが古来の街道かどうかは解らないがよく踏まれた道だ。雨がパラパラと降ってきたので、1時間ほど上った道脇の笹原にテントを張る。まだ歩けるが先を急ぐほどのこともない。
軽量テント |
雨は夜中に止んで、月明かりがテントを通して入ってくる。
10/13(木) 曇り空ではあるが、雨は止んでいる。昨夜はさすがに少々寒かった。
7時出発。ドライブウェイを横断したり、道路脇を通ったりしながら山道は続く。やがて、沼ッ原の駐車場に到着する。十台ほど駐車している。もうハイカーが入っている様だ。駐車場の下は揚水式発電所の上部調整池である。少し下ると沼ッ原湿原だ。秋の色が深い。花の時期にはニッコウキスゲが咲き乱れるらしいが。それほど大きくはない湿原の木道を歩き、林の中に入る。所々に石仏が立っている。木札が置かれているのを見ると今でも修験の対象となっているようだ。
揚水式発電所上部ダム | 沼ッ原 |
沼ッ原 | 頭の落ちた仏様 |
しばらく歩くと下りにかかる。麦飯坂だ。道は悪くないのだが、どうもバランスが悪くなってきたし片眼が悪くなって遠近感も鈍くなり、下り坂で腰が引けてストックを頼りに恐る恐るにしか下れない。時間がかかる。
麦飯坂 | 麦飯坂の仏像 |
坂を下りきると、湯川を渡る。ここは増水すると渡れなくなりそうだ。やがて下から湯川沿いに上がってくる林道に出て、しばらく歩くと三斗小屋宿跡にでる。入り口には墓地があり、その中に「戦死若干墓」という墓碑がある。戊辰戦争のとき会津方と政府軍の間の戦闘がここでありその時の戦死者を祀っているらしい。宿跡は広い平地となっていて数十軒の家屋が建つ余地がある。今はただ当時の白湯山信仰の名残の石仏が残っているのみである。
湯川 | 林道と合流 |
路上の猿 | 村の入り口 |
三斗小屋宿跡 | 白湯山信仰の名残の石仏 |
宿跡を過ぎると湯ノ沢づたいに三斗小屋温泉へと登ってゆく。会津中街道はガイドマップには載っていないが、多分ここから大峠に直接別の谷伝いに登っていったのだろう。
道は温泉宿の荷運びに使われているのかしっかりとした山道だ。ヤマブドウの実がなっている。数個摘まむと甘酸っぱくて美味しい。
那珂川源流の碑 | ヤマブドウ |
2時、温泉に到着する。大K屋と煙草屋の二件の宿があるが、予約してあるのは煙草屋の方。大K屋は旅館に近い宿だが、煙草屋は山小屋に近い宿のようだ。露天風呂があるのは煙草屋。6畳間で相部屋である。
早速、露天風呂に飛び込む。なかなかいい湯だ。二槽に別れていて、ぬるい方が丁度いい入り心地だ。熱い方にも頑張って一分ほど浸かるが、それ以上は無理だ。
大K屋 | 煙草屋 |
煙草屋のテント場 | 煙草屋露天風呂 |
夕食も山小屋程度の内容だが、お膳などは古い会津塗(?)で古い宿という趣を感じる。食後、同宿の男性と話が弾む。
10/14(金) 7時出発。雲の多い天候ではあるが、一応晴れ。延命水で今夜の分の水を汲んで、稜線に上がる。峰の茶屋跡である。
山腹の紅葉 | ドウダンツツジ |
荷物を置いて、茶臼岳をピストンする。お釜を廻って山頂へ。ここはロープウェイの駅から一時間足らずなので登山者が一杯である。若いハイカーが多いのも東京から近いためか。東の方を見下ろすと、那須の平原が広々と広がっている。西の方を見下ろすと中腹は紅葉の真っ盛りである。少しノンビリしすぎたか、峠まで戻って北へ縦走を続ける。
茶臼岳山頂 | 姥ヶ平を見下ろす |
那須野展望 | 茶臼岳下りから見た峠の茶屋跡と朝日岳 |
1時間ほど赤茶けたガレ場の道を登ってゆくと、朝日岳頂上に着く。ここからの眺めも雄大である。南には先ほど登った茶臼岳が見事な姿を見せている。
朝日岳山頂 | 茶臼岳を振り返る |
山腹の紅葉 | 山腹の紅葉 |
なだらかな道を三本槍岳を目指す。途中で三本槍の方から来た昨日の同宿者と会い、ベンチに腰掛けて話をする。この辺りはドウダンツツジがあるがもう紅葉の盛りは終わっている。少し登ると三本槍岳の頂上に着く。1917m、那須連峰最高峰で一等三角点である。名前からすると険しいピークのように思われるが、実はなだらかな頂上である。名前の由来は昔この頂上が境であった三つの藩が毎年ここに槍を立てて境界を確認しあったいう故事に基づくらしい。
三本槍岳 | 三本槍頂上 |
三本槍から北には人影はない。少し北へ行くと大峠分岐。ここを西に下ると会津中街道最大の難所の大峠である。その向こうには流石山から三倉山へと続く美しい稜線が連なっている。200mほど急な坂を下ると鏡沼の傍に下りてくる。青いきれいな水を湛えた美しい池だ。
猪苗代湖遠望 | 大峠へ下る尾根と流石山・三倉山 |
眼下の鏡沼と旭岳 | 鏡沼 |
更に須立山の急坂を恐る恐る下る。バランスが悪くなって急坂の下りが苦手になってきた。旭岳(赤崩山)への稜線を辿り、少し山腹へ廻り込むと坊主沼の避難小屋だ。もう4時過ぎ、もう少し先に進みたかったが今日はここまでにしよう。まだ新しいきれいな小屋だ。中には布団、毛布まで置いてくれている。有難い。
坊主沼 | 避難小屋 |
爆睡。
10/15(土) 今回の山行で初めての快晴。旭岳山腹のまだ紅葉の始まっていないブナ林の中の道を急ぐ。ほとんど平坦で快調に進むことが出来る。甲子山を経て甲子峠に出る。この下には会津と白河を結ぶ甲子トンネルが抜けている。7年前、開通したばかりのトンネルを自転車で越えたことを思い出す。
ガイドマップを見ると道路沿いに水場のマークがある。心細いので汲んでおこう。崖に管が打ち込んであるが、水は出ていない。水源は涸れているが、道路に上にしみ出た水が流れている。味わってみると少し苦いが、用心のためこれでも汲んでいこう。
旭岳山腹を行く | ブナ林の中の道 |
旭岳を振り返る | これから向かう大白森山 |
甲子峠近くのススキ | 甲子峠 |
これから大白森山の登りにかかる。200m程の登りだ。初めの100mはゆっくりした登りだが、残りは涸れ谷の登りになり苦しい。1642mの頂上。今日の最高峰だ。紅葉が美しい。北の方にはこれから向かう小白森山までの稜線のブナの黄葉が最高潮だ。
二杯山、一杯山を越えてノンビリと黄葉の尾根道を辿る。小白森山頂上。まだ日が高い。ここらでちょっと一休み。1時間ほど寝転んでまどろむ。
大白森山 | 小白森山へのブナ林の稜線と二岐山 |
一杯山 | 稜線の紅葉 |
小白森山 | 小白森山頂上からの大白森山 |
後は二岐温泉まで長いダラダラ下りの道を辿る。特に云うほどのことはない。結局、三本槍からこちらでは誰にも出会わなかった。
二岐温泉は宿が数軒の鄙びた温泉だ。予約しておいた日本秘湯の宿・大丸あすなろ荘に入る。登山客には少々贅沢な宿だ。内湯も二俣川沿いの露天風呂も透明で豊富な湯がこんこんと湧いている。中でも自然の川床を生かした岩風呂は甌穴があって面白い。
黄葉 | 二岐山 |
下山 | 二岐温泉の宿 |
今回の山行は温泉三昧の旅でもあった。
翌日、新幹線車窓から見た那須連山 |