スイス紀行 (上) 2016.08


 家内が探してきたツアー旅行「初めての山岳ホテル スイス横断3連泊ハイキング 9日間」というのに参加した。このコースではサン・モリッツ、ツェルマット、シャモニーを廻るので、1990年にグリンデルワルド周辺をハイキングしたことがあり、これでスイスの主要な山岳地帯を全て観光することが出来るので、心が動いたのだった。

8/1 朝、関西空港をKLMでアムステルダムにむけて出発する。添乗員のH氏、兵庫県川西市から来たF夫妻、神戸市のY夫妻と私達の7名である。あと、一日先に東京を出発している娘がチューリッヒで合流する予定である。
 夕方、アムステルダム経由でチューリッヒに到着し、娘と合流し、合計8名での旅行となる。小型バスで夕闇迫る道をクールへ、ここからは真っ暗となった峠越えの山道をサンモリッツに向かう。この道は1992年欧米出張の時、一人でドライブした(欧米出張日記 其の二 ドイツ前編)のだが、その時よりはだいぶ道がよくなっているようだ。
 11時過ぎて、ようやくホテルに到着して、ベッドに倒れ込む。

8/2 七時よりブュッフェ式の朝食。あまり上等のホテルではないので品数は少ないが、ハム、チーズはさすがに旨い。スイスのパンは不味いと聞いていたが、そんなことはなく結構美味だ。
 今日の昼食を買いに、近くのスーパーマーケットに行く。物価の高いのにビックリ。500mlのエビアンが日本円で500円以上する。サンドイッチと果物を買う。野菜売り場も覗いてみる。あまり珍しいものは見あたらない。日本では売り物にならない貧弱な白菜(キナコール)、ナスは一種類のみ、シイタケと書いてあるがどう見ても別物。
 サンモリッツ湖畔の遊歩道をサンモリッツ駅まで歩く。今日はレーティッシュ鉄道ベルニナ線に沿っての観光だ。この線はベルニナ特急が走っていることでも有名である。各駅停車の列車に乗ってゴトゴトと氷河から流れ落ちる渓流に沿って谷間を上ってゆく。ラーゴ・ビアンコ湖畔(2253m)のオスピツィオ・ベルニナ駅で下車して一つ先のアルプグリュム駅までハイキングである。この湖は南北の両端がせき止めてあって、主に南へ流れてイタリアのティラノへと至る。道は未舗装の林道といった感じでマウンテンバイクがひっきりなしに走ってゆく。サンモリッツ周辺はマウンテンバイクが大流行のようだ。もちろん列車は自転車積み込み自由のようだ。坂が多いせいかロードバイクはほとんど見かけない。
 道ばたには花が一杯咲いている。どう見てもイブキトラノオ、イブキジャコウソウと思われるのもある。添乗さんの話では花の盛りは7月なのだが今年は少し遅いようだとのこと。花の写真を撮りながらなので一行のビリを歩いている。2時間ほどほとんど上り下りのない道を歩いてアルプグリュム駅到着。見下ろすとティラノへの線路が急坂を蛇行しながら下っている。見上げるとペリュ氷河が迫っている。豪快な景色である。

 

     
沿線風景  ベルニナ山系   オスピツィオ・ベルニナ駅
     
 ビアンコ湖畔  可愛いハイカー ビアンコ湖 
     
 湖対岸  ハイキング道  
     
 流行のMTB ハイキングの一行  終点が近づく 
     
 ベルニナ線は急降下 アルプグリュム駅が見えてきた  アルプグリュム駅と ペリュ氷河


途中の花

  マンテマ  マンテマ 
  サクシフラガ・ステラリス?   チングルマの親分?
 ゲンチアナ・オルビクラリス? イブキジャコウソウ?  イブキトラノオ 
フィテウマ・ヘミスファエリクム(魔女の爪)    トリフォリウム・アルピヌム 
カンパヌラ・エクシサ     ルメックス・アルピヌス(ギシギシ)
  ノコギリソウの類 小型のシシウド? 
 タカネナデシコ   コロニラ・バジナリス? 

 ここから引き返してディアボレッツァ展望台のロープウェイに乗り、一気に3000mまで上がる。展望台のすぐ下はペルス氷河が流れている。ここから簡単に下りて行ける。下から氷河トレッキングの一行が登ってきた。
 残念ながらピッツ・ベルニナ(4049m)を最高峰とするベルニナ山群は雲の中だ。明日は反対側から山群を眺めることになっているので晴天を期待しよう。
     
 氷河湖   3000mに咲く花 
 
 ペルス氷河

 サンモリッツに帰って、中心街をブラブラする。ドルフ(村)というだけに小さな区画だが高級避暑地だけに五つ星ホテルや有名店がずらりと並んでいる。

8/3 今日は快晴。展望が期待出来そう。ホテル前からバスに乗って、サンモリッツの南西にあるスールレイまで行き、眼下に2つの湖を眺めながらロープウェイを乗り継いでコルバッチ展望台(3300m)に上がる。眼前のベルニナ山群は写真のごとく絶景である。最高峰のピッツ・ベルニナ(4049m)には少し雲がかかっている。西の方遙か彼方にモンテローザが見える。ここから100km程はあるだろうか。その横にマッターホルンが見えるはずだが、雲が邪魔している。
     
 シルヴァプラーナ湖 ピッツ・ベルニナ  モンテ・ローザ遠望 

 中間駅まで下り、1時間弱の散歩でスールレイ峠に行く。ここにも美しい花が咲いている。峠から見上げるベルニナ山群も絶景だ。峠の小屋で名物のソーセージ入りのスープを食べる。なかなか旨かった。
     
ゴンドラからスールレイ峠を見下ろす  コルバッチ展望台  ゴンドラ 
     
スールレイ峠からのベルニナ山群  ピッツ・ベルニナ  スールレイ小屋 
 
スールレイ峠からのベルニナ山群 (パノラマ) 
 ドロニクム・グランデフロルム? コケマンテマ?    リンドウの類
 トウヤクリンドウ ゲンチアナ・ババリカ  ラヌンクルス・グラキアリス 
 リナリア・アルピナ    
ワスレナグサ  サクシフラガ・ブリオイデス   
   
    ゲンチアナの類 

 サンモリッツに帰って、セガンティーニ美術館を訪れる。1992年、サンモリッツを通り過ぎた時は11月であり、美術館は閉館中で残念な思いをした。その後、5年前日本で回顧展が行われた時にはもちろん見に行って感激したものであった。
 森の中の小さな石造りの建物だがそのたたずまいが好ましい。数十点を展示するだけの小さな美術館だが、絵を鑑賞するには適当な大きさのような気もする。まず下の階では回顧展でもお目にかかった「アルプスの真昼」「水を飲む茶色い雄牛」などを見て、上の階に上がり「アルプス三部作 生・自然・死」に圧倒される。円形の展示室の上の窓からの自然の光に浮かび上がる絵は不思議な情感を漂わせている。やはりこの絵はこの場所で見るべきものだと思う。

     
 シルヴァプラーナ湖でのカイトボーディング セガンティーニ美術館   セガンティーニ美術館遠望

 今晩はフリーの夕食なので、3人で5つ星ホテルのバドラッツ・パレスへ行って食べる。それぞれラム、カモ、仔牛のグリルを注文して少しづつシェアする。ワインはここから近いイタリア、ロンバルディアの赤を一本。最後にチーズのセットでウィリアムス・ヴィルネ(梨から作る蒸留酒)を一杯。素晴らしい夕食だった。

8/4 今日はサンモリッツから氷河特急でツェルマットに向かう。その前に早朝、娘はサンモリッツ湖をジョギングで2周するが、我々夫婦は一周する。5キロ、約一時間の散歩だ。標高1800m、朝の冷気が快い。
     
早朝のサン・モリッツ市街  湖畔のカワラボウフウ  早朝のサン・モリッツ市街 

 朝サンモリッツを出発して、約8時間かけてツェルマットまで300km弱を走るので実際は平均時速40km以下の鈍行列車だ。サンモリッツからクールまでは世界遺産となっている美しい渓谷地帯を走って行く。おっと、有名なランドヴァッサー橋を見落としてしまった。残念。
 クールで列車は逆方向に走り出し、ライン川渓谷を遡って行く。氷河特急が走るのはほとんど単線なので待ち合わせ停車が多い。列車は徐々に高度を上げて、標高2000mのオーバーアルプ峠を通過する。美しい湖の傍を通るなだらかな峠である。ここからループやアプト式で急降下して、牧場や農地の拡がる広い谷間をノンビリと走る。シンプロントンネルで有名なブリークを過ぎるといよいよツェルマットに向かって狭い渓谷の急勾配をアプト式歯車軌道で上って行く。天然石のスレート葺の木造民家が目に付く。
     
 氷河特急沿線風景  氷河特急沿線風景   氷河特急沿線風景 
     
  氷河特急沿線風景  氷河特急沿線風景   氷河特急沿線風景(ライン川) 
     
  氷河特急沿線風景  氷河特急沿線風景(オーバーアルプ峠)    氷河特急沿線風景
     
  氷河特急沿線風景(アプト式軌道)  氷河特急沿線風景    氷河特急沿線風景(天然石スレート民家)


 列車は大分遅れてツェルマットの到着。今日から3泊するゴルナグラートホテルは山岳鉄道で上がった標高3000mにある。最終電車の出発までちらりとツェルマットの中心部を見物する。おや、モンベルの店がある。ハイシーズンとあって、小さい町ながら混み合っている。この町は自動車の乗り入れ禁止なので動いている車は小さい電気自動車のタクシーぐらい。
 40分程かかって列車は山頂駅に到着する。お目当ての山々は雲の中。モンテローザから流れ落ちている氷河が目の下である。早速、夕食。なかなか美味しい夕食だ。標高が高いので、ワインは一杯だけ。

     
 ツェルマット市街 ゴルナグラート鉄道   ゴルナグラートホテル
 
モンテローザ(左)とリスカム(右)の間から流れ出るグレンツ氷河(後日、晴天時)