花の季(とき)


木蓮の蕾ふくらむようやくに遅き春をばもどかしげにて


膝立てて煙草喫い居る女あり春の古城の石垣の下


春の夕べ城の松葉も柔らげに誘われ出
(いず)るカップル二、三


城の堀仲間はずれか白鳥の窪みに一羽うずくまりおり


人送る宴の川辺水音の轟くばかり響きていたり


吾妹子とたどる月下の花の道幾年経つるこの桜木ぞ


幾年月経たる桜のうろ深く小枝生え出
(い)で白き花咲く


春の宵庭に散りたる桜花なごり雪かと見まごうばかりに


夕陽の細くさしこむ露地の奥小さき犬の鎖につながる


七十の翁は立山指し示し春のスキーのプラン語れる


人形
(ひとかた)に雪の消えたる僧ヶ岳麓の丘の水仙色映ゆ


神通の河原に駿馬の駆け抜けて後に舞いたる花吹雪かな


藤つばき花水木咲く道たどる汝が庭の花いかに咲けるや


ひとひらの雲山の端に浮かびたり地はこれすべて新緑に萌ゆ


一年に一度来たれる山荘は友も草木も変わらざりけり


夜半の雨風の音も激しきにい寝もやらず低く語らう


思うどち集い遊べる春の宵この憶い出を永久に残さむ


幼子の我に逆らう子供の日己
(おの)がたどりし道とは知りて


 前のページへ 

 魁猿のホームページへ 

 禿羊のホームページへ