2002年 12月

さて今月は、「酒を楽しむ」と題して楽しい酒を詠んだ詩を集めました。酒の詩は以前一度話題にしましたが、酒に関する詩はどっさりありますのでこれだけで数年は持つほどでしょう。
私事ですが、我が家には長男が未だ独身で同居しております。これがまた小生に輪をかけた飲んべえで、毎晩小生と晩酌で飲み較べをやっておりましたが、この度会社の健康診断でひっかかりました。肝機能が少々異常となっておりました。当然、禁酒。「ザマーミロ」と言いたいところですが、女房が怒り出しました。「前々から、ゴミに酒瓶を毎回沢山出すのが隣近所に恥ずかしかったけど、だいたいあなた達は飲み過ぎです。息子が禁酒するのに、お父さんが晩酌するのが許されますか? あなたも付き合いなさい。」ということで、お正月まで我が家は禁酒状態となりました。ああ、早く来い来いお正月。

李賀 「将進酒」
 まずは豪華絢爛の酒。若くして逝った青年詩人の面目躍如といった若々しい詩です。「将進酒」は楽府の題で多分多くの人によって作られたのでしょうが、この李賀のものと、李白の「君不見黄河之水天上来」で始まる一首が双璧といえるでしょう。

瑠璃鍾      瑠璃の鍾(さかずき)
琥珀濃      琥珀濃し
小槽酒滴真珠紅  小槽 酒滴って 真珠紅なり
烹龍炮鳳玉脂泣  龍を烹 鳳を炮(つつみや)けば 玉脂泣く
羅屏繍幕囲香風  羅屏 繍幕 香風を囲む
吹龍笛      龍笛を吹き
撃鼉鼓      鼉
鼓(だこ)を撃つ
皓歯歌      皓歯 歌い
細腰舞      細腰 舞う
況是青春日将暮  況んや是 青春 日将に暮れんとして
桃花乱落如紅雨  桃花乱落して 紅雨の如し
勧君終日酩酊酔  君に勧む 終日 酩酊して酔え
酒不到劉伶墳上土 酒は到らず 劉伶墳上の土

ガラスの杯は琥珀色。小桶からは酒が滴り、紅の真珠の粒となる(葡萄酒?)
龍を煮て、鳳凰を照り焼きにすれば、玉の脂が涙のようににじみ出す。
薄絹の屏風や刺繍の幕が香しい風を囲い込む。
龍笛を吹いて、ワニの皮を張った鼓を打つ。皓歯が歌い、細腰が舞う。
まして、この春の日はまさに暮れゆかんとして、桃の花は乱れ落ちて紅の雨のようだ。
君よ、一日中、酔いつぶれるまで飲みたまえ。
あの大酒飲みの劉伶(竹林の七賢)でも、死んでしまえばもう飲めないのだから。


白居易 「問劉十九」
 次は、寒夜に友と飲む酒。

緑蟻新醅酒  緑蟻 新醅(しんばい)の酒           出来たての濁り酒がぶつぶつ緑色に泡立って、ほんまに旨そうや。
紅泥小火炉  紅泥 小火の炉           火鉢の練炭もおこって、部屋はポカポカ。
晩来天欲雪  晩来 天 雪ふらんと欲す     こら今晩は雪やで。
能飲一杯無  能く 一杯を飲むや無(いな)や  一杯やれへんか


李白 「月下独酌 四首其一」
 李白の一人酒。まさに仙人の世界に遊んでいますね。

花間一壷酒  花間 一壷の酒
独酌無相親  独酌 相親しむ無し
挙杯邀明月  盃を挙げて 明月を邀え
対影成三人  影に対して 三人と成る
月既不解飲  月は既に飲むことを解せず
影徒随我身  影は徒(いたず)らに我身に随う
暫伴月将影  暫く月と影とを伴い
行楽須及春  行楽 須(すべか)らく春に及ぶべし
我歌月徘徊  我歌えば月は徘徊し
我舞影凌乱  我舞えば影は凌乱たり
醒時同交歓  醒時 同(とも)に交歓し
酔後各分散  酔後 各々分散す
永結無情遊  永く無情の遊を結び
相期邈雲漢  相期すること雲漢邈(はるか)なり

要するに、月と影を友に飲みながら暫く一緒に遊んだが、酔っぱらって分かれた。でもまた天の川の彼方で会って、こんな遊びをしよう。

参考図書
 中国詩人選集 14 李賀 荒井健注 岩波書店
 中国名詩選(下) 松枝茂夫編 岩波文庫
 中国名詩選(中) 松枝茂夫編 岩波文庫