2005年9月
ようやく朝晩は涼しさを感じるようになりました。今、週に三日、仕事に行っている伊賀盆地は内陸気候で昼間はとても暑いのですが、朝晩は大阪に比べると大分涼しいようです。このあたり、気の早い田圃では稲刈りが行われています。
今月は、初秋と題して詩を集めてみました。
劉禹錫 秋風引
何處秋風至 何れの処よりか 秋風至る
蕭蕭送雁群 蕭蕭として 雁群を送る
朝来入庭樹 朝来 庭樹に入り
孤客最先聞 孤客 最も先に聞く
劉禹錫は何度か紹介した柳宗元と同年に進士に及第して、同志として政治活動を行いました。題名の「引」は「行」「曲」「吟」などと同様に歌の意味。この詩は「孤客」とあるように、左遷されて一人異郷にわび住まいしている時作られたものである。
元稹 夜坐
彼が蜀の地に赴任している時に作ったものです。結聨の意は、幼な子は万里離れた地、何時会うことができるであろうか、家からの手紙が寝床の周りに散らかっている。
雨滞更愁南瘴毒 雨滞(とどこお)りて 更に南瘴の毒を愁いしに
月明兼喜北風涼 月明らかにして 兼ねて北風の涼しきを喜ぶ
古城楼影横空館 古城の楼影 空館に横たわり
湿地蟲声遶暗廊 湿地の蟲声 暗廊を遶(めぐ)る
蛍火乱飛秋已近 蛍火 乱れ飛びて 秋已に近く
星辰早没夜初長 星辰 早(つと)に没して 夜初めて長し
孩提万里何時見 孩提 万里 何れの時か見ん
狼藉家書満臥床 狼藉の家書 臥床に満つ
張籍 秋思
中唐の詩人。韓愈に推薦されて、国子博士から国子司業に至ったといいますから、まあ文部省の役人みたいなものでしょうか。杜甫に傾倒して、その詩集を焼いて、その灰を蜜に混ぜて飲んだという話があるそうです。
洛陽城裏見秋風 洛陽城裏 秋風を見る
欲作家書意萬重 家書を作らんと欲して 意 万重
復恐怱怱説不尽 復た恐る 怱怱(そうそう)にして 説いて尽くさざることを
行人臨發又開封 行人 発するに臨んで 又封を開く
洛陽に滞在しているうちにもう秋風のそよぐ頃となってしまった。家への手紙を書こうとすると、つもる思いがおしよせる。
あわてて書いたので、言い尽くしていないと心配になり、手紙を託する旅人が出発する時になって、また封を開いてみる。
参考図書
漢詩への誘い 季節を詠う(清明の巻) 石川忠久著 NHKカルチャーアワー
漢詩名句辞典 鎌田正、米山寅太郎著 大修館書店
三体詩 村上哲見著 朝日文庫