2007年10月

 今月は、秋を主題とした詩を集めてきました。

王維 「山居秋瞑」

 

空山新雨後   空山 新雨の後

天気晩来秋   天気 晩来秋なり

名月松間照   名月 松間に照り

清泉石上流   清泉 石上に流る

竹喧帰浣女   竹喧(かまびす)しく 浣女帰り

蓮動下漁舟   蓮動いて 漁舟下る

随意春芳歇   随意なり 春芳歇(つ)くるとも

王孫自可留   王孫 自ら留まるべし

 

最後の二句は、「ままよ、春の花は散ってしまおうが、私はここに留まろう」

 

 

張籍 「秋思」

 中唐、安徽省出身。韓愈に認められてその門人となり、国子司業(大学副学長?)に至った。

 

洛陽城裏見秋風   洛陽城裏 秋風を見る

欲作家書意万重   家書を作らんと欲して 意万重

復恐怱怱説不尽   復た恐る 怱怱として 説きて尽ざるを

行人臨発又開封   行人 発するに臨んで 又封を開く

 

東都、洛陽の町中で秋風の吹くのを見た。すると故郷が恋しくなり手紙を書こうとするが、いろいろ書きたいことが一杯である。

急いで書いたので書き漏らしたことがあるのではないかと、手紙を託す旅人が出発するにあたってもう一度封を開いて読み直してみる。

 

見秋風:晋の時代、張翰が洛陽で秋風が立つのを見て、故郷の呉の料理が恋しくなり官職を捨てて帰郷した故事をふまえている。

 

王昌齢 「出塞行」

 

白草原頭望京師   白草原頭 京師を望めば

黄河水流無尽時   黄河 水流れて 尽くる時無し

秋天曠野行人絶   秋天 曠野 行人絶ゆ

馬首東来知是誰   馬首 東へ来るは 知んぬ 是れ誰ぞや

 

西域の地、白草原に立って都の方を望めば、黄河の水は眺める方へと流れ去って尽きることもない。

秋空の下に拡がる広野には旅行く人の影も絶えた。だが、馬の頭を東に向けてやってくる人影、いったい誰だろう。

 

 

秦観 「秋日」

 北宋の人。蘇軾の門人で政治的にも彼と行動を共にする。今古奇観(明代の短編小説集)では蘇軾の妹(蘇小妹:兄以上に賢い:非実在)と結婚することになっている。

 

霜落溝積水清   霜落ち 溝(かんこう) 積水清し

寒星無数傍船明   寒星 無数 船に傍うて明らかなり

菰蒲深処疑無地   菰蒲 深き処 地無きかと疑う

忽有人家笑語声   忽ち有り 人家 笑語の声

 

霜が降りて 運河の水は深々と澄んでいる。寒空の無数の星が船のそばで輝く。

マコモやガマの生い茂る中、もう行き止まりかと思うと、たちまち人家が現れ人の笑い声が聞こえてきた。

 

参考図書

 唐代山水田園詩伝 銭文輝著 吉林人民出版社

 漢詩歳時記 渡部英喜著 新潮新書

 唐詩選 前野直彬注解 岩波文庫

 宋詩選 小川環樹著 筑摩書房

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