2010年12月

李商隠 「幽居冬暮」

 

羽翼摧残日  羽翼 摧残の日

郊園寂寞時  郊園 寂寞の時

暁鶏驚樹雪  暁鶏 樹雪に驚き

寒鶩守氷池  寒鶩(ぼく) 氷池を守る

急景忽云暮  急景 忽ち云(ここ)に暮れ

頽年已衰  頽年 (ようや)く已に衰う

如何匡国分  如何ぞ 国を匡すの分

不与夙心期  夙心と与に 期せざるや

 

それがあれば空高く天翔て青空にも昇れると頼りにしていた羽が、損ないくだけ、官を退いて幽居する冬の一日。町を距てることほど遠からぬ田舎は人の気配なく寂寞としている。昨夜降りしきった雪は樹々を白く染め、暁の時をつげる鶏はその雪の明るさに驚いて鳴き、寒の家鴨は、氷の張りつめた池の一隅にじっとへばりついている。

すみやかな時の経過に、あっと云う間に一年は過ぎて年の暮となった。寄る年波は、だんだんと私の体力と気力をくじき、私はもうすっかり衰弱してしまった。

それにしても一体、どうしたことだろう。国を正すべき士人の本分と、かってそれを志した私の希望とが、こんなにもくい違ってしまったのは。

 

参考図書

 李商隠 河出文庫 高橋和巳著 (和訳は本文をそっくり写しました)晩唐の詩人


Homepageへ戻る