2011年5月
初夏の風
詩経国風「邶風」の中の詩、凱風を紹介します。各節にリフレインがあること、内容から見てもこれは民謡ですね。凱風とは南から吹く穏やかな風を云うらしいです。
凱風(がいふう)
凱風自南 凱風 南よりし
吹彼棘心 彼の棘心(きょくしん)を吹く
棘心夭夭 棘心 夭夭たり
母氏劬労 母氏 劬労(くろう)せり
初夏の和やかな風が南から吹いてくる。それが棘(棘のあるナツメ)の若芽を吹いている。
棘の若芽は若々しく成長した。私たちのお母さんはほんとに苦労した。
凱風自南 凱風 南よりし
吹彼棘薪 彼の棘薪(きょくしん)を吹く
母氏聖善 母氏 聖善なり
我無令人 我に令人無し
初夏の和やかな風が南から吹いてくる。それが棘(ナツメ)の若木を吹いて成長させた。
お母さんはほんとにえらい人だけど、私たちにいい人はいない。
爰有寒泉 爰(ここ)に寒泉有り
在浚之下 浚(しゅん)の下に在り
有子七人 子七人有り
母氏労苦 母氏労苦せり
ここには冷たい水の泉があって、それに浚の人たちは頼って生きている。
私たち兄弟七人を育てて、お母さんはほんとに苦労した。
睍v黄鳥 睍v(けんかん)たる黄鳥
載好其音 載(すなわ)ち 其の音を好くす
有子七人 子七人有り
莫慰母心 母の心を慰むる莫し
綺麗な羽の黄鳥、鳴声も美しい。
兄弟は七人もいるのに、お母さんの心を慰めるものは一人もいない。