2011年7月
梅の実
時期的には少し遅れましたが、梅の実の詩を集めてみました。
摽有梅(詩経召南)
摽有梅 摽(お)ちて梅有り 梅の実は落ちて
其実七兮 其の実 七 残るは七分
求我庶士 我を求むる庶士よ 私を欲しいと思う人は
迨其吉兮 其の吉に迨(およ)べ 吉日を選んで申し込んでよ
摽有梅 摽(お)ちて梅有り 梅の実はどんどん落ちて
其実三兮 其の実 三 残りはもう三分
求我庶士 我を求むる庶士よ 私を欲しいと思う人は
迨其今兮 其の今に迨(およ)べ 今日すぐに申し込んでよ
摽有梅 摽(お)ちて梅有り 梅の実は落ち尽して
頃筐墍之 頃筐(けいきょう)に之を墍(と)る 竹カゴに拾う
求我庶士 我を求むる庶士よ 私を欲しいと思う人は
迨其謂之 其の之を謂うに迨(およ)べ 今すぐに声をかけて一緒になってちょうだい
三衢道中(宋 曾幾)
梅子黄時日日晴 梅子 黄ばむ時 日日晴れ
小渓泛尽却山行 小渓 泛び尽して 却って山行す
緑陰不減来時路 緑陰 来時の路に減ぜず
添得黄鸝四五声 添え得たり 黄鸝(こうり)の四五声
梅の実が黄色く実る頃は、毎日晴れの日が続き、渓谷を舟で源流まで行き、今度は山中を歩いて進む。
緑の木陰は来たときと少しも変わらぬが、帰りの今度はウグイスの幾声かが加わっている。
四時田園雑興 (宋 范成大)
梅子金黄杏子肥 梅子は金黄にして 杏子肥え
麦花雪白菜花稀 麦花は雪白にして 菜花稀れなり
日長籬落無人過 日長く 籬落 人の過る無く
唯有蜻蜓蛺蝶飛 唯 蜻蜓 蛺蝶の飛ぶ有り
梅の実が金色になり、杏の実は太ってきた。麦の花は真っ白だが、菜の花はもう終わりだ。
初夏の日長、垣根の辺に通り過ぎる人もなく、ただトンボやチョウチョが飛び回っているだけ。
参考図書
詩経 海音寺潮五郎訳 中公文庫
世界文学大系 中国古典詩集 橋本循・青木正児訳 筑摩書房
漢詩歳時記 夏 黒川洋一他編 同朋舎
范成大詩選 周汝昌選注 人民文学出版社伊達政宗