2月 「梅花」
これを書いている時点ではまだ梅には早いのですが、2月になれば満開となるでしょう。
林逋 「梅花」
林逋は以前に「山園小梅」(2003、03)に紹介しています。
吟懐長恨負芳時 吟懐 長(つね)に恨む 芳時に負(そむ)けし時
為見梅花輒入詩 梅花を見しが為に 輒(すなわ)ち詩に入る
雪後園林纔半樹 雪後の園林 纔(わずか)に半樹
水辺籬落忽横枝 水辺の籬落 忽ち横枝
人憐紅艶多応俗 人の紅艶を憐れむこと 多く応に俗なるべし
天与清香似有私 天の清香を与えしは 私有るに似たり
堪笑胡雛亦風味 笑うに堪えたり 胡雛の亦風味ありて
解将声調角中吹 声調を将って 角中に吹くを解せんとは
詩情を抱きながら、春の盛りをみすみす過ごすのは心残りだから、梅花を見ると何時も詩を作るのだ。
雪の止んだ庭にはやっと半分だけ花をつけた木、水辺の生籬からはふと横様に差し出た枝。派手な紅色を好むのは俗人と決まっているが、天がこの花に清らかな香りを与えたのは何かえこひいきをしたように思える。
胡人の若者が風流なことに、梅の曲を角笛で吹こうとは、笑止なことではないか。
姜虁 「除夜自石湖帰苕渓」(十首 其一)
南宋の詩人。一生、官吏とはならなかったが、詩名は高かった。この詩は范成大の別荘(石湖:蘇州郊外)に招かれて、そこから自宅のあった呉興(?渓)に帰る途中の詩。
細草穿沙雪半銷 細草 沙を穿って 雪半ば銷(き)え
呉宮煙冷水迢迢 呉宮 煙冷やかにして 水迢迢(ちょうちょう)たり
梅花竹裏無人見 梅花 竹裏に人の見る無く
一夜吹香過石橋 一夜 香を吹いて 石橋を過ぐ
細かい草が砂地に芽を出して、雪も半ば消えた。古の呉王の宮殿跡に冷ややかなもやがなびき、水路が長くのびている。
梅花が見る人もなく、竹藪の裏にひっそりと咲いている。この一夜、香りが石橋を越えてこちらまで漂ってくる。
参考図書
宋詩選 小川環樹選 筑摩書房