初秋
梅雨が明けたと思うと、もう八月、立秋です。とても、秋という感じではありませんが、季節を早取りして秋の詩を。
王維 「山居秋暝」
空山新雨後 空山 新雨の後
天気晩来秋 天気 晩来 秋なり
明月松間照 明月 松間に照り
清泉石上流 清泉 石上に流る
竹喧帰浣女 竹喧(かまびす)しくして 浣女帰り
蓮動下漁舟 蓮動いて 漁舟下る
随意春芳歇 随意なり 春芳の歇(つ)くること
王孫自可留 王孫 自ら留まる可し
人気のない山に降ったばかりの雨の後、夕方の空の気配はもう秋だ。
明月が松の間に照っており、清らかな泉が石の上を流れる。
竹林がざわめくと洗濯の娘たちが帰って行き、蓮が動いたかと思うと漁の舟が下ってゆく。春の花は散るにまかせよう。若様はもうここに留まって帰らないよ。
楊万里 「感秋」
南宋四大詩人の一人です。以前、一度紹介しております(2001.07))。
平生畏長夏 平生 長夏を畏れ
一念願清秋 一念 清秋を願う
如何遇秋至 如何(いかん)ぞ 秋の至るに遇えば
不喜却成愁 喜はずして 却って愁を成すは
書冊秋可読 書冊 秋には読む可く
詩句秋可捜 詩句 秋には捜す可し
永夜宜痛飲 永夜 宜しく痛飲すべし
曠野宜遠遊 曠野 宜しく遠遊すべし
江南万山川 江南 万山川
一夕入寸眸 一夕 寸眸に入る
請弁双行纏 請う 双行纏を弁ぜよ
何処無一丘 何れの処か 一丘無からん
最後の四句
江南の限りない山と川が、この夕べ私の小さな瞳に飛び込んでくる。
どうか一組の脚絆を用意してくれ。どこにでも私の行きたい野山はあるのだから。
詩として鑑賞するには宋詩特有の理屈っぽさが鼻につきますが、アウトドア派の小生にとってはまさに我が意を得たりと入った詩です。
参考図書
中国文学歳時記 黒川洋一他編 同朋社