老残の秋
陸游 「懐旧」
身是人間一断蓬 身は是れ 人間の一断蓬
半生南北任秋風 半生 南北 秋風に任す
琴書昔作天涯客 琴書 昔 天涯の客と作り
蓑笠今成沢畔翁 蓑笠 今 沢畔の翁と成る
夢破江亭山駅外 夢は破る 江亭 山駅の外
詩成灯影雨声中 詩は成る 灯影 雨声の中
不須強覓前人比 須いず 強いて前人に比を覓むるを
道似香山実不同 香山に似たりと道うも 実は同じからず
この身は人の世にさすらい飛ぶ根無しヨモギのようなもの。我が半生は南へ北へと秋風にまかせて行ったり来たり。
昔は琴と書物を携えて天涯をさすらう旅人となり、今は蓑笠を着けて沢辺で釣る老人だ。
今見た夢は河岸のあずまやと山中の宿場。そしてこの灯火と雨の音の中で詩ができあがる。
この私を無理に昔の人にたとえる必要もあるまい。この境遇をかの白楽天に似ているという人もあるが、実は全く違うのだ。
参考図書
中国文学歳時記 黒川洋一他編 同朋社