2013年5月
清和
李文淵 賦得四月清和雨乍晴(「四月清和雨乍晴」を賦し得たり)
小圃香銷雨乍停 小圃 香り銷えて 雨乍(たちま)ち停み
陰陰新緑遍郊坰 陰陰たる新緑 郊坰(こうけい)に遍し
波添曲沼当軒碧 波添う曲沼 軒に当りて碧に
雲斂遙峰入座青 雲斂(おさ)まる遙峰 座に入りて青し
掠水燕雛飛欲倦 水を掠むる燕雛 飛んで倦まんと欲し
宿花蝶羽夢初醒 花に宿る蝶羽 夢初めて醒む
薫風到処田禾好 薫風 到る処 田禾好し
為愛農歌駐馬聴 農歌を愛するが為に馬を駐めて聴く
菜園の花を萎れさせた雨がすぐに止んで、深い色の新緑が野原一杯に広がった。
波の打ち寄せる沼の青さがひさしに当たり、雲晴れた遙かな峰の青さがが座敷に映える。
水面を掠めて幾度も燕が飛び交い、花にじっと止まっていた蝶は今夢から覚めたばかりのよう。
初夏の薫風が到るところ麦が好くのび、私は馬を止めて農夫たちの歌に聞き入る。
作者は清代の人ですが、あまりよく知られてはいないようです。「四月清和雨乍晴」は宋の司馬光の「初夏」(2009.05紹介)の起句として有名ですが、これをうまく展開して初夏の情景を写していますね。清和とは初夏のおだやかな風光を表す言葉のようです。
参考図書
中国文学歳時記 夏 黒川洋一他編 同朋舎