2013年7月 淮河の村


梅堯臣  小村

淮濶洲多忽有村  淮は濶く 洲は多くして 忽ち村有り
棘籬疎敗謾為門  棘籬は疎敗して 謾(むな)しく門を為す
寒鶏得食自呼伴  寒鶏 食を得て 自ら伴を呼び
老叟無衣猶抱孫  老叟 衣無く 猶孫を抱く
野艇鳥翹唯断纜  野艇 鳥の翹(あが)れるは 唯断纜
枯桑水𪘂只危根  枯桑 水の𪘂(は)みて 只危根あり
嗟哉生計一如此  嗟哉(ああ) 生計 一に此の如きに
謬入王民版籍論  謬(あやま)って 王民の版籍に入れて論ぜんとは


淮河は広く砂州が多いところにたちまち村が見えてきた。イバラの垣根は破れ、門は壊れかけている。
痩せこけた鶏は餌を見つけて仲間を呼び集めている。満足な着物もない老人が孫を抱いている。
鳥が尾を挙げて止まっているのは粗末な舟の切れ切れのとも綱。枯れた桑の根元を水が洗って今にも倒れそう。
ああ、こんな暮らし向きのものまで、間違って天子様の戸籍に書き込まれて税金を取られるのだ。


戴復古 淮村兵後
 
南宋の詩人で陸游とも交友があった。終生、官途にはつかなかった。

小桃無主自開花  小桃 主無くして 自ら花を開き
煙草茫茫帯晩鴉  煙草 茫茫 晩鴉を帯ぶ
幾処敗垣囲故井  幾処の敗垣 故井を囲む
向来一一是人家  向来(きょうらい) 一一 是れ人家なりき


小さな桃の木は主がなくとも自然に花をつけ、茫茫とした煙のような草原には巣に帰る鴉の影。
崩れた垣のなかに古井戸が何カ所もみえる。あれは昔は一つ一つ人家だった跡なのだ。

この時代には淮河は南宋と金の国境となっていた。


参考図書
 宋詩選 小川環樹 筑摩書房

 

 

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