冬夜
宋 梅堯臣 「和道損欲雪与家人小児輩飲」
(道損の「雪ふらんと欲して家人小児輩と飲む」に和す)
陰雲濃圧野 陰雲 濃く野を圧し
風猟樹高鳴 風猟(さわ)ぎて 樹高く鳴る
寒禽並枝立 寒禽 枝に並びて立ち
頗以見物情 頗(すこぶ)る以て 物の情を見る
目前両稚子 目前の両稚子
為慰豈異卿 慰めを為すは豈(あ)に卿と異ならんや
欲置一壺酒 一壺の酒を置き
且独対婦傾 且(しばら)く 独り婦に対(むかい)て傾けんと欲す
清 袁枚 「十二月十五夜」
沈沈更鼓急 沈沈として更鼓(こうこ)急に
漸漸人声絶 漸漸として人声絶ゆ
吹燈窗更明 燈を吹けば 窓更に明るく
月照一天雪 月は照らす 一天の雪
沈々と更けゆくなか、時を告げる太鼓の音が忙しげに聞こえる。段々と人の声もしなくなった。
灯火を吹き消せば窓が一層明るく、月が一面に降り積もった雪を照らしていた。
近代 瞿秋白 「雪意」
瞿秋白は中国共産党初期指導者の一人で、37歳で殺された。
雪意凄其心惘然 雪意凄其として 心惘然たり
江南旧夢已如煙 江南の旧夢 已に煙の如し
天寒沽酒長安市 天寒くして酒を沽(か)う 長安の市
猶折梅花伴酔眠 猶お 梅花を折りて 酔眠に伴わん
雪の降りそうな凄然とした空、失意の心は沈む。かつての江南の夢は茫茫とした煙の彼方。
今日はこの寒空の下、長安の市場で酒を買い求める。ついでに梅の花でも折って酔っ払いの睡りの伴にでもしようか。
参考図書
中国文学歳時記 冬 黒川洋一他編 同朋舎出版