2015年04月
李白 月下独酌 四首
其一
花間一壺酒 花間 一壺の酒 花の中の一壺のうま酒
独酌無相親 独酌 相親しむ無し 一緒に飲む相手もいない一人酒
挙盃邀名月 盃を挙げて名月を邀え 盃をあげて名月の登ってくるのを迎え
対影成三人 影に対して三人と成る 影を併せて三人になった
月既不解飲 月 既に飲を解せず 月は元より酒を飲まず
影徒随我身 影 徒らに我身に随う 影はただ私に従っているばかり
暫伴月将影 暫らく月と影を伴い しかし暫くは月と影と一緒になって
行楽須及春 行楽 須らく春に及ぶべし この春を彷徨い楽しもう
我歌月徘徊 我歌えば 月は徘徊し 私が詠えば月はいざよい
我舞影凌乱 我舞えば 影は凌乱たり 私が舞えば影も乱れ舞う
醒時同交歓 醒時 同じく交歓し 醒めているときには一緒に楽しみ
酔後各分散 酔後 各々分散す 酔った後にはそれぞれ別れ去る
永結無情遊 永く無情の遊を結び 永久に無情の遊びをしようと
相期邈雲漢 相期す 雲漢邈かなり 天の川の彼方での再会を約束する
其三
三月咸陽城 三月 咸陽城 三月の咸陽の町
千花昼如錦 千花 昼 錦の如し 花々が真昼間に錦を織りなしたよう
誰能春独愁 誰か能く 春独り愁う こんな素晴らしい春の日に誰が愁いに沈んでいられようか
対此径須飲 此に対して径ちに須らく飲むべし この眺めにはまず酒を飲むべしだ。
窮通与修短 窮通と修短とは 困窮と栄達や長寿と短命なんていうものは
造化夙所稟 造化 夙に稟する所なり 造化の神が授けてくれるもの
一樽斉死生 一樽 死生を斉しくす 樽のうま酒を飲み干せば生も死も同じもの
万事固難審 万事 固より審らかにすること難し 世の中万事、見通すことは出来ないものだ。
酔後失天地 酔後 天地を失い 酔っ払えば天地も定かでなく
兀然就孤枕 兀然として孤枕に就く ごろりと寝床につく
不知有吾身 吾が身有るを知らず 我が身が有るのやら無いのやら
此楽最為甚 此の楽 最も甚しと為す この楽しみが最高だ
参考図書
漢詩選 李白 青木正児選 集英社