2015年08月

蓮の花
 夏の花である蓮を詠った詩を二つ紹介します

白居易  「池上」 (池のほとり)

小娃撐小艇  小娃(しょうあ) 小艇に撐(さおさ)し
偸採白蓮廻  偸かに白蓮を採りて廻る
不解蔵蹤跡  蹤跡を蔵(かく)すを解せず
浮萍一道開  浮萍 一道開く 


少女が小舟に棹さして来て、こっそりと白蓮を採って帰っていった。
まだ幼くて舟の通った跡を隠すほどの知恵は働かないので、浮き草の中に一筋の航跡が開いている。
白居易はそっとこの情景を窺っていたのでしょうね。

朱彝尊  「荷花」 (蓮の花) 

梁間巣燕幾曽来  梁間の巣燕 幾曽(いつ)か来る
竈下狸奴去不回  竈下の狸奴 去りて回らず
猶有荷花憐旧雨  猶お 荷花の旧雨を憐れむ有りて
年年一為主人開  年年 一たび主人の為に開


梁に巣を作っている燕はいつになったら戻ってくるのだろうか。かまどの下をねぐらとしている猫はどこかへ行ったまま帰ってこない。
ただ蓮の花だけは馴染みの友を慰めようとして、毎年一度この家の主人のために花を開いてくれる。
旧雨:雨と友が発音が似ているために旧友の意で用いられる。
朱彝尊(しゅいそん):清代初期の詩人。

参考図書
 中国文学歳時記 夏 黒川洋一他編 同朋舎


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