2016年02月

杜牧 念昔遊 
 杜牧は二十六才から約十年の間、江南の地で気ままに遊んで過ごした(地方赴任の大官の幕僚)。この若いときの体験をしばしば詩に詠んでいます。特に「遺懐(2001.02)」はよく知られています。

其一       其の一
十載飄然縄検外  十載 飄然たり 縄検の外
罇前自献自為酬  罇前 自ら献じ 自ら酬を為す
秋山春雨閑吟処  秋山 春雨 閑吟の処
倚遍江南寺寺楼  倚りて遍し 江南 寺寺の楼

十年もの間、規則などにとらわれず飄然と遊んだものだ。酒甕を前にして一人で酒の遣り取りをして酔っ払った。
秋の山や春の雨、ノンビリと詩を作っていた。そうしているうちに江南に寺寺の楼閣を登り尽くしてしまったよ。

其二       其の二
雲門寺外逢猛雨  雲門寺外 猛雨に逢う
林黒山高雨脚長  林黒く 山高くして 雨脚長し
曾奉郊宮為近侍  曾つて郊宮に奉じ 近侍と為る
分明㩳㩳羽林槍  分明なり 㩳㩳(しょうしょう)たる羽林の槍

越州の雲門寺の外では豪雨に遭ったことがある。林は真っ黒になり山は高くて雨脚はずっと長く続いていた。
あれは以前宮廷の祭で近侍の役を務めたとき見た儀式に立てられたずっと並んだ槍とソックリだったよ。

其三       其の三
李白題詩水西寺  李白 詩を題す 水西寺
古木廻巌楼閣風  古木 廻巌 楼閣の風
半醒半酔遊三日  半醒半酔 遊ぶこと三日
紅白花開山雨中  紅白 花は開く 山雨の中

李白が詩に詠った名刹の水西寺。古木が茂り岩石に囲まれ、楼閣には涼しい風が吹いていた。
醒めては酔い、ほろ酔い気分で遊んだ三日間。紅白の花々が山の雨に濡れながら咲いていた

参考図書
 杜牧詩選 松浦友久・植木久行編訳 岩波文庫
 杜樊川絶句詳解 声教社同人編 声教社