2016年04月

李白 「将進酒」 
 将進酒は楽府題ですから、多くの作品があるのでしょうが、よく知られているのは李白のこの作品と、以前紹介したことのある李賀の作品です。
 李賀の作品は、天上の宴会であるかのように豪華絢爛でしたが、李白のこの作品もまず黄河の流れから詠いだして、次に人生のはかなさを詠う。これも豪快ですね。

君不見黄河之水天上来  君見ずや 黄河の水 天上より来るを
奔流到海不復廻      奔流 海に到りて復は廻らず
君不見高堂明鏡悲白髪  君見ずや 高堂の明鏡 白髪を悲しむを
朝如青絲暮成雪      朝に青絲の如きも 暮には雪と成る
人生得意須尽歓      人生 意を得れば 須らく歓を尽すべし
莫使金樽空対月      金樽をして空しく月に対せしむること莫れ
天生我材必有用      天 我材を生ずるは必ず用有り
千金散尽還復来      千金 散じ尽すも 還た 復た来らん
烹羊宰牛且為楽      羊を烹 牛を宰して 且く楽を為さん
会須一飲三百杯      会(かなら)ず須(すべか)らく 一飲 三百杯なるべ


宰(さい):屠殺する

岑夫子 丹丘生    岑夫子 丹丘生
将進酒 君莫停    将に酒を進めんとす 君停むる莫かれ
与君歌一曲       君が与(ため)に 一曲を歌わん
請君為我側耳聴    請う 君 我が為に耳を側てて聴け
鐘鼓饌玉不足貴    鐘鼓 饌玉 貴ぶに足らず
但願長酔不願醒    但だ長酔を願って 醒むるを願わず
古来聖賢皆寂莫    古来 聖賢 皆寂莫
惟有飲者留其名    惟だ飲者の其名を留むる有り


岑夫子:不明の人物
丹丘生:李白の親友の道士
饌玉:ご馳走

陳王昔時宴平楽    陳王 昔時 平楽に宴し
斗酒十千恣讙謔    斗酒 十千 讙謔を恣にす

主人何為言少銭    主人 何為れぞ 銭少なしと言わんや
径須沽取対君酌    径ちに須らく 沽い取りて 君に対して酌まん
五花馬 千金裘    五花の馬 千金の裘
呼児将出換美酒    児を呼びて 将き出して 美酒に換え
与爾同銷万古愁    爾と同に万古の愁を銷(け)さん


陳王:魏の曹操の子、詩人として優れていた。
讙謔(かんぎゃく):賑やかに遊び楽しむ
児:店のボーイ

参考図書
 中国名詩選(中) 松枝茂夫選 岩波文庫