2016年08月

夏 王安石と蘇軾
 江戸後期の詩人、柏木如亭が元代に出版された「連珠詩格」という唐宋代の詩人の詩集を抄訳して「訳注連珠詩格」を出版しました。これには当時の話し言葉を使った翻訳が着いています。
 王安石と蘇軾といえば北宋時代の政治を二分する新法党と旧法党の立役者で政敵でありましたが、文学者としてはお互いに尊敬し合っていたようです。

王安石 「書湖陰先生壁」

茆簷長掃浄無苔  茆簷(ぼうえん) 長く掃きて 浄くして苔無し
花木成蹊手自栽  花木 蹊(こみち)を成して 手自(てずか)ら栽う
一水護田将緑繞  一水 田を護りて 緑を将って繞り
両山排闥送青来  両山 闥(たつ)を排して 青を送り来る


かやぶきでも いつもそうじがいきとどいて こけさえはえぬ。
したみちのできた いろいろなはなも てずからうえたのだ。
ひとすじのかわが たをしゅごして とりまけば
ふたつあるやまが げんかんをおしあけてくるようにみえる


蘇軾 「渓陰堂」

白水満時双鷺下  白水 満る時 双鷺下り  
緑槐高処一蝉吟  緑槐 高き処 一蝉吟ず
酒醒門外三竿日  酒は醒む 門外 三竿の日
臥看渓南十畝陰  臥して看る 渓南 十畝の陰


みずのでたじぶんに ふたつのさぎがおりると
えんじゅのたかいとこに ひとつのせみがないている
さけがさめたれば もんのそとのひざしは もういつつ(午前八時)じぶんだけれど
かわのみなみにある じっちょうあまりのこかげをば ねながらみている

参考図書
 訳注連珠詩格 柏木如亭著 岩波文庫