2016年12月
杜甫 高適との交遊
杜甫は若い頃、李白、高適と交遊を結び、三人で山西地方を旅をしたりしました。その思い出は深かったようで、いくつも詩を作っています。高適にも「人日寄杜二拾遺」(2008.01)
というしみじみとした好い詩があります。
「遺懐」 (懐いを遺る)
憶與高李輩 憶う 高李の輩と
論交入酒壚 交りを論(むす)んで 酒壚に入りしことを
兩公壯藻思 両公 藻思壯(さかん)にして
得我色敷腴 我を得て 色は腴(よろこび)を敷(ひろ)ぐ
氣酣登吹臺 気酣(たけなわ)にして吹台に登り
懷古視平蕪 古を懷いて 平蕪を視れば
芒碭雲一去 芒碭(ぼうとう)に 雲一たび去り
雁鶩空相呼 雁鶩(がんぼく) 空しく相い呼ぶ
昔、高適、李白の両先輩と友達になって、酒場に出入りしたことが思い出される。
先輩達は文学への思いが盛んで、私を仲間に入れてくれて大変喜んでくれた。
意気昂然として吹台(開封にある高台)に上がって、曠野を眺めて昔の出来事を思いやった。
劉邦が蛇を切ったという芒碭山の辺りに雲が流れ去り、雁や鴨が空しく鳴きながら飛んで行く。
「贈高式顔」 (高式顔に贈る)
昔別是何処 昔別れしは 是れ何れの処ぞ
相逢皆老夫 相逢えば 皆老夫なり
故人還寂寞 故人 還た寂寞たり
削跡共艱虞 跡を削られて 共に艱虞(かんぐ)
自失論文友 論文の友を失いてより
空知売酒壚 空しく知る 売酒の壚
平生飛動意 平生 飛動の意
見爾不能無 爾(なんじ)を見ては無きこと能わず
この前別れたのはどこだっけ、また顔を合わせればお互い年を取ったね。
君も景気悪そうでしょんぼりしてるね。君も僕も官を逐われて難儀なことだね。
文学を語り合った君のおじさんの高適先輩と別れてしまってからは、一緒に飲んだ馴染みのバーのスタンドが思い出されるよ。
でも往年の元気活発な気分が、君を見るとまた起こってくるよ。