2017年07月
菱の実
蘇軾 「六月二十七日、望湖楼酔書 五首 其の三」
烏菱白芡不論銭 烏菱 白芡 銭を論ぜず
乱繋青菰裹緑盤 青菰に乱繋して 緑盤に裹(つつ)む
忽憶嘗新会霊観 忽ち憶う 会霊観に嘗新せしを
滞留江海得加餐 江海に滞留して加餐するを得たり
杭州西湖の黒い菱の実と白いオニバスの実ときたらただ同然だ。緑の蓮の葉で包んで青いマコモで無造作に縛っている。
昔、都、開封の会霊観(道教の寺院:ここの池は菱とハスの実が名物だった)で初物を味わったことを思い出した。この水郷にぐずぐずと留まっているお陰でたくさん食べることが出来た。
范成大 「夏日田園雑興」
采菱辛苦廃犂鉏 菱を采る辛苦 犂鉏(りじょ)を廃し
血指流丹鬼質枯 血指 丹を流して 鬼質枯る
無力買田聊種水 田を買うに力無く 聊か水に種うるに
近来湖面亦収租 近来 湖面 亦た租を収む
菱の実を採るのは苦労が多く、犂やクワは役に立たない。トゲで指からは血が出て赤く染まり、体は幽霊のように痩せこけてる。
田を買うだけの金がないので、水中に菱を植えているのだ。それなのに近ごろのお達しでは湖面にまで税金をかけるとのことだ。
参考文献
中国文学歳時記 夏 黒川洋一他編 同朋舎