2017年12月
劉禹錫
 
劉禹錫は「烏衣巷」という詩を紹介しています(2008.05)。中唐の詩人で白楽天、柳宗元などと親交があった。

石頭城

 
石頭城:三国時代、呉の孫権が南京の近く長江沿岸に築いた城。この時代には荒れ果てていた。
山囲故国周遭在  山は故国を囲みて周遭として在り
潮打空城寂寞回  潮は空城を打ちて寂寞として回る
淮水東辺旧時月  淮水東辺 旧時の月
夜深還過女牆来  夜深くして 還た女牆を過ぎて来る


山は古い都(南京)をぐるりと取り囲んでおり、潮は人気のない町の城壁にぶつかって寂しく廻ってゆく。
ここ淮河の東の辺りに月が、深夜また昔と変わら姿で城壁の上の姫垣を越えて見えてくる。

竹枝詞

 劉禹錫は王叔文の政治改革の失敗に連座して、左遷され、地方の知事を転々とします。長江三峡にある奉節に在職している時、その土地の民謡のメロディーで土地の風俗を詠い、竹枝詞九首を作ります。これはその一つです。今までの詩にはないくだけて艶のあるものですね。以後、大変流行して多くの詩人が真似をします。

山桃紅花満上頭  山桃の紅花 上頭に満ち
蜀江春水拍山流  蜀江の春水 山を拍って流る
花紅易衰似郎意  花の紅の衰え易きは 郎の意に似て
水流無限似儂愁  水の流れの無限なるは 儂の愁に似たり

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月露発光彩  月露 光彩を発す
此時方見秋  此の時 方に秋を見る
夜涼金気応  夜涼しくして 金気応じ
天静火星流  天静かにして 火星流る
虫響偏依井  虫響(な)いて 偏えに井に依り
螢飛直過楼  螢飛んで 直ちに楼を過る
相知尽白首  相知 尽く白首
清景復追遊  清景 復た追遊せんや


最後の二句は「お前さんも私も白髪頭になってしまった、この清らかな景色を一緒に見ることももう出来ないだろうね」といった意味でしょうか。

参考図書
 漢詩名句時点 鎌田正、米山寅太郎著 大修館書店
 劉禹錫詩選 梁守中選注 遠流出版公司