2018年12月

杜牧の冬

題斉安城楼    斉安の城楼に題す

鳴軋江楼角一声  鳴軋(おあつ)たり 江楼 角一声
微陽瀲瀲落寒汀  微陽 瀲瀲(れんれん)として 寒汀に落つ
不用憑欄苦廻首  用いず 欄に憑りて 苦(ねんごろ)に廻首するを
故郷七十五長亭  故郷 七十五長亭


長江に臨む高楼から悲しげな角笛の音が鳴り響く。寒々しい微かな夕陽がキラキラと汀に揺れている。
欄干によりて首を廻らせてしげしげと眺めるのはよそう。故郷の長安はここから七十五の宿駅を隔てているのだから。
斉安:黄州(湖北省黄岡市)


汴河阻凍     汴河 凍れるに阻まる

千里長河初凍時  千里の長河 初めて凍る時
玉珂瑶珮響参差  玉珂 瑶珮 響き参差たり
浮生恰似冰底水  浮生 恰も似たり 冰底の水に
日夜東流人不知  日夜 東流するも 人知らず


千里もの長い汴河が初めて凍結した。馬の玉飾りや人の帯の玉が響き合う。
はかない浮き世は丁度氷の底の水に似ている。日夜、東に流れているのに人は気づかないのだ。
汴河:黄河と淮河を結ぶ運河 凍ると舟が通行出来ない

独酌

窓外正風雪  窓外 正に風雪
擁炉開酒缸  炉を擁して 酒缸(しゅこう)を開く
何如釣船雨  何如(いかん)ぞ 釣船の雨に
篷底睡秋江  篷底 秋江に睡ると


窓の外はまさに吹雪だ。炉端で酒の瓶を開ける。
この楽しみは隠者となって釣船の船底で秋雨の中で眠るのとどちらがいいかな?

参考図書
 杜牧詩選 松浦友久・植木久行編訳 岩波文庫