2009年04月 李杜の春

 今月は杜甫と李白の春と題して詩を集めました。杜甫の詩は彼が成都で安定した生活を送っていた時期の物です。

 李白の二首は、あまりにもよく知られたもので今更紹介するのも気が引けますが。

 

杜甫 「絶句」

 

両個黄鳴翠柳  両個の黄(こうり) 翠柳に鳴き

一行白鷺上青天  一行の白鷺 青天に上る

窓含西嶺千秋雪  窓には含む 西嶺千秋の雪

門泊東呉万里船  門には泊す 東呉万里の船

 

緑の柳に二羽の鶯が鳴いている。一列の白鷺が青い空へと上ってゆく。

草堂の窓には西の嶺の万年雪が一幅の絵のように見え、門には東呉へと万里の行程を下ってゆこうとする船が停泊している。

 

 

杜甫 「寒食」

 

寒食江村路  寒食 江村の路

風花高下飛  風花 高下に飛ぶ

汀煙軽冉冉  汀煙 軽くして冉冉(ぜんぜん)たり

竹日浄暉暉  竹日 浄くして暉暉たり

田父要皆去  田父 要(むこ)うれば皆去(ゆ)き

隣家問不違  隣家 問(おく)れば違わず

地偏相識尽  地偏にして相識り尽す

犬亦忘帰  犬も亦帰るを忘る

 

寒食の時節の川沿いの路。風に花びらが高く低く舞っている。

水際のモヤが次第に上がってきて、竹林の日差しは清らかに輝いている。

農夫であっても頼まれれば全て出かけて行き、隣からの贈り物は断らずに有難く頂戴する。

ここは片田舎でみんな知り合いであり、鶏や犬までも隣へ遊びに出かけ帰るのを忘れている。

 

 

李白 「春夜洛城聞笛」

 

誰家玉笛暗飛声  誰が家の玉笛か 暗に声を飛ばす

散入春風満洛城  散じて春風に入りて洛城に満つ

此夜曲中聞折柳  此の夜 曲中 折柳を聞く

何人不起故園情  何人か 故園の情を起こさざらん

 

 

李白 「山中問答」

 

問余何意棲碧山  余に問う 何の意あって 碧山に棲むと

笑而不答心自閑  笑って答えず 心自ら閑なり

桃花流水然去  桃花 流水 然(ようぜん)として去り

別有天地非人間  別に天地の人間(じんかん)にあらざる有り

 

参考図書

 杜詩 鈴木虎雄・黒川洋一訳注 岩波文庫

 漢詩選 8 李白 青木正児著 集英社 


Homepageへ戻る