2019年09月

崔顥  長干曲 四首
 盛唐の詩人で、汴州(河南省開封)の人。開元十三年の進士。才能はあるが、軽薄な人柄だったと伝えられる。「黄鶴楼」の作者として有名。
 長干は南京郊外を流れる秦淮河沿いの船着き場の周りに発達した繁華街。この辺りは六朝時代から繁栄した地域で、当時、長干曲という民謡があり、この詩はそれを元歌としている。

其一
君家何處住  君家(きみ)は何処にか住す
妾住在橫塘  妾は住みて橫塘に在り
停船暫借問  船を停めて暫らく借問す
或恐是同鄉  或いは恐らく是れ同鄉ならんか


遊女「あんた、どこの人? うちは、横塘に住んでるのよ。
   船を停めてよ、ちょっと話せーへん。ひょっとしたら、生まれたところ同じと違う?」

其二
家臨九江水  家は九江の水に臨み
來去九江側  九江の側を來去す
同是長干人  同じく是れ 長干の人なるも
生小不相識  生小にして相識らず

舟人「俺の家は九江の川端や。 九江の川沿いを行ったり来たりしてるのよ。
   同じ長干の生まれやいうても、子どものときやからお前のことなんか知らんわ」

其三
下渚多風浪  下渚 風浪多し
蓮舟漸覺稀  蓮舟 漸く稀なるを覚ゆ
那能不相待  那んぞ能く相待たずして
獨自逆潮歸  独自(ひとり)潮に逆いて帰る


遊女「下のなぎさに波風が立ってきたわよ。 蓮舟も段々少なくなってきたみたいよ。
   なんでわたしの相手もせんと、ひとりで潮に逆らって帰るの?」

其四
三江潮水急  三江 潮水急なり
五湖風浪湧  五湖 風浪湧く
由來花性輕  由來 花性軽し
莫畏蓮舟重  蓮舟の重きを畏る莫れ


舟人「『三江 さす潮激し、五湖 波風湧く』と云うやんか。
   遊女は浮気心と決まったもんよ。 舟の舵が重くなっても、さっさと帰るわ」