2020年11月

秋の別れ
 今月のネタに思いあぐんで、中国文学歳時記から二首選びました。

高適 送李少府貶峡中、王少府貶長沙 (李少府の峡中に貶せられ、王少府の長沙に貶せらるを送る)
 高適については2001.01参照。
 この詩は李王という二人が、地方官(県尉など)に左遷されたのを見送ったときの詩。

嗟君此別意何如  嗟 君 此の別れ 意 何如(いかん)
駐馬銜杯問謫居  馬を駐め 杯を銜んで 謫居を問う
巫峡啼猿数行涙  巫峡の啼猿 数行の涙
衡陽帰雁幾封書  衡陽の帰雁 幾封の書
青楓江上秋天遠  青楓江上 秋天遠く
白帝城辺古木疎  白帝城辺 古木疎なり
聖代即今多雨露  聖代 即今 雨露多し
暫時分手莫躊躇  暫時 手を分つを 躊躇すること莫れ


ああ、君たち。今日ここで別れますが、思いは如何でしょうか。馬を駐めて酒を酌み交わしてこれから左遷されてゆく地の様子を尋ねる。
李君の行く三峡では巫峡の哀しげな猿の鳴き声にハラハラと涙が流れるでしょうし、王君の行く長沙では衡陽から帰る雁がはたして幾通の手紙を運んでくれるでしょうか。
長沙の青楓江あたりでは秋空は遙かに遠く、また三峡の白帝城辺の古木はもうすっかり葉を落としているでしょう。
しかし今は聖天子の御世で恩恵がタップリとあります。暫しの別れですぐ帰れますよ。躊躇うことなく出発して下さい。


王昌齢 重別李評事 (重ねて李評事に別る)

莫道秋江離別難  道(い)う莫れ 秋江 離別難しと
舟船明日是長安  舟船 明日 是れ長安
呉姫緩舞留君酔  呉姫の緩舞 君を留めて酔わしむ
随意青楓白露寒  随意なれ 青楓白露の寒きを

楓に露の降りる寒さなどもうどうでもよいでしょう。

参考図書
 中国文学歳時記 秋(下) 同朋社