2021年12月

楊万里 小動物を詠う
 楊万里(誠斎)は南宋四大家の一人として有名です。彼の後、誠斎体と呼ばれた彼の詩風が流行します。しかし、ここで紹介する詩のように細やかな情景、情感を詠った詩が多く、思想とか、強い感情の吐露が少ないため、次第に飽きられて来ました。
 しかし、日本人から見ますと、俳句などに通じるところがあり好感が持てますね。


観蟻        蟻を観る

偶爾相逢細問途  偶(たまたま)爾(なんじ)と相い逢うて細やかに途(みち)を問う
不知何事数遷居  知らず 何事か 数(しばしば)居を遷すを
微躯所饌能多少  微躯 饌(せん)する所 能く多少ぞ
一猟帰来満後車  一猟 帰来するに 後車は満つ


偶然、おまえ(蟻)を見つけて細やかに行き先を尋ねる。どうしておまえはしょっちゅう引っ越しするのだ。
そんな小さな身体でどれだけ食べられるというのだ。一回狩猟に出て帰る時には獲物をいっぱい車に積んで居るではないか。


寒雀

百千寒雀下空庭  百千の寒雀 空庭に下り
小集梅梢話晩晴  梅梢に小集して 晩晴に話す
特地作団喧殺我  特地 団を作して 我を喧殺す
忽然驚散寂無声  忽然 驚き散じて 寂として声無し


何百何千もの寒雀が人のいない庭に下りてきて、梅の梢にしばし集まって夕晴れの中でおしゃべりしている。
わざと集まってやかましく騒いで私を困らせいたが、突然、何に驚いたか飛び散って、ひっそりとして声もない。


凍蠅

隔窓偶見負暄蠅  窓を隔てて 偶(たまたま)見る 負暄(ふけん)の蠅
双脚挼挲弄暁晴  双脚 挼挲(ださ)して 暁晴に弄す
日影欲移先会得  日影 移らんとして 先ず 会(さと)り得て
忽然飛落別窓声  忽然 飛びて別窓に落ちて声あり


窓越しにひなたぼっこの蠅がたまたま眼に入った。両足をこすり合わせて、晴れた朝の光を楽しんでいる。
日の光が移ろうとしているのを悟って、ふいに飛び立ったと思ったらほかの窓にぶつかって音を立てている。


宿新市徐公店   新市の徐公店に宿る

籬落疎疎一径深  籬落 疎疎 一径深し
樹頭新緑未成陰  樹頭の新緑 未だ陰を成さず
児童急走追黄蝶  児童 急ぎ走りて 黄蝶を追う
飛入菜花無処尋  飛びて菜花に入りて 尋ぬるに処無し  


生け垣がまばらに続く深い小径、木々の新緑はまだ陰を作るほどには茂っていない。
子供たちが走って黄色い蝶を捕まえようとしているが、菜の花畑に飛び込んでどこにいるか判らなくなってしまった。

参考図書
 中国歴代詩人選集 楊万里詩選 劉斯翰選注 遠流出版公司
 中国文学歳時記 黒川洋一他編 同朋社