2022年01月

新春

壬寅新春      南宋 · 陸游
陸游の詩にちょうど今年の干支の詩がありました(1182年1月)。

半生常是道辺人  半生 常に是れ 道辺の人
歳晚初收事外身  歳晚 初めて收む 事外の身
濁酒一樽聊永日  濁酒一樽 永日を聊しみ
小園三畝亦新春  小園三畝 亦た新春
尚無枕寄邯郸夢  尚 枕を邯郸の夢に寄すること無く
那有衣沾京洛塵  那(なん)ぞ 衣の京洛の塵に沾(ぬ)るること有らんや
門外烟波三百里  門外 烟波 三百里
此心惟与白鷗親  此の心 惟だ白鷗と親しむのみ


私のこの半生は故郷を離れての旅の身であった。年の暮れになって初めて官僚の役目を終えた身となった。
一樽の濁り酒で一日ゆっくりとし、三畝の小さな庭はまた新春を迎えた。
もう旅枕で邯鄲の夢を見ることもなく、また衣を都の塵にまみれさせることがあろうか。
門の外は鏡湖のさざ波が三百里も続いている。私の心はただ白いカモメと親しむだけなのだ。



新春     真山民
余凍雪纔乾  余凍 雪纔(わず)かに乾き
初晴日驟暄  初晴 日驟(にわ)かに暄(あたた)かなり
人心新歳月  人心 新歳月
春意旧乾坤  春意 旧乾坤
煙碧柳回色  煙は碧にして 柳は色を回(かえ)し
焼青草返魂  焼は青くして 草は魂を返す
東風無厚薄  東風 厚薄無く
随例到衡門  例に随いて 衡門(こうもん)に到る

まだ寒さの残る中で雪は消え去り、初めて晴れると日がにわかに暖かくなった。
人々の心が浮き立つ新年となり、春の気配が変わらぬ天地に満ち満ちてくる。
柳はもとの色に返り、もやは緑色となる。野焼きの後は青く、草は生き返ったようだ。
春風はどこにも公平に吹き、粗末な門構えのわが家にも例年のように吹き来る。

参考図書
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 中国文学歳時記 春 黒川洋一他編集 同朋舎観蟻        蟻を観る