20年ほど以前に「Hiking in the Alps」(中野融著、山と渓谷社)という大変写真の美しいガイドブックを購入して、常に
眺めながらいつかは行こうとチャンスを窺っていたのだが、1990年夏、ついに家内とオランダ・スイスを旅する機会を得た。
グリンデルワルドを朝出発してクライネシャイデックまで歩き、登山電車でユングフラウヨッホを往復し、再び歩いて
ヴェンゲンを経由してラウターブルンネンまで下った。まことに気分爽快で、家内が突然ハイな状態になってケラケラと
笑い出した。後はミューレンまで電車で行き一泊。
翌日も快晴の中、牧場の中の登山道を通って渓谷の奥へと進む。この辺り、お花畑が素晴らしい。峠を越えて反対側の
谷を下る。この辺りから小雨となった。最後にブンドアルプの小屋まで一時間ほどの登りとなったが、足弱の家内はバテて
しまう。叱り付けるようにして歩かせようやく小屋に到着した。家内はいまだにあの時は恨めしかったという。登山小屋は牛小
屋の二階にあり、客は我々だけ。あまり綺麗ではなかった。夕食時、小屋の人は独・仏・伊は話せるが、英語はだめとのこと
で往生する。大学時代ドイツ語会話クラブに入っていた家内が記憶の底から引っ張りだして、「ジャガイモはカルトッフェル、
ソーセージはブルストと言うんよ。」 「おお、そうか。」 小屋のお婆さんに「ブルスト、カルトッフェル」でやっと夕飯にありつけ
た。
翌日も雨。予定ではもう一つ峠を越えて、エッシェネン湖まで歩く予定であったが、この天気の中を歩かせると、離婚沙汰
になりそうなので、ここでストップとなった。
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