白馬から日本海への道-栂海新道


山で出会った花々(画像をクリックすると拡大写真に移ります)
一応名前を付けていますが、間違っているかも知れません


 

魁猿君とこの夏は栂海新道を歩こうと予定を組んでいたのだが、直前になって彼が急病で入院したため単独行となってしまった。この歳になると、約束していても何かの都合でキャンセルとなることが多い。その時は独りで行くだけのことだ。

 

7/29 

いつもの夜行急行「きたぐに」自由席にて、糸魚川をめざす。平日だが夏休みとあって、かなりの乗車率である。

 

7/30 

早朝、糸魚川着。すぐに、蓮華温泉行のバスに連絡している。乗客は3名である。

 730蓮華温泉着。バスは大勢の下山客と入れ替わり。蓮華温泉はまだ入浴したことはない。今度はゆっくり滞在したいものだ。

 8時、出発。山の上の方はガスの中だが、登山道は強い日差しに照らされている。一汗かきそうだ。登山道はさすが北アルプスの主要路で、しっかりとした歩きやすい道である。天狗の庭から見上げる雪倉辺りはガスがかかっている。

 3時間で、白馬大池。大勢の登山客が休憩している。辺りにはコマクサ、チングルマ、ハクサンイチゲなどが咲き乱れている。ミヤマアズマギクのデイジーかと思うような花の色がひときわ鮮やかである。

 白馬大池からはなだらかな尾根伝いの登りである。ガスがかかってきて視界は効かなくなり、時折雨粒が顔を打つが雨具を着けるほどのことはない。三国境で雨具を着ける。

 雨が激しくなった4時前、白馬山荘着。今日は500名ほどの泊まりとのことで、一人一畳のスペースが確保できる。明日は土曜日なので大変な混雑だろう。

 

7/31

 7時出発。今日は朝日小屋までなので、ゆっくりとした行程だ。相変わらずガスが濃いが、幸い雨は止んでいる。

 雪倉岳周辺は高山植物の花盛りだ。私は静かな山歩きが好みなので、北アルプスは八月終わりから九月に来ることが多かったが、人が多く来るシーズンにはやはりそれだけの理由があると実感する。この辺りから天候が少し回復して、時折日差しが出てきた。

 この道を歩くのは2度目である。30年ほど前、激しい雨の中朝日小屋へと歩き、雪倉避難小屋で震えながら昼食を摂ったのを思い出す。

 朝日岳の登り。前回は雨で捲き道を辿ったが、今回は頂上を踏もう。400m近い急登を喘ぎながら登る。

 3時、山頂。深いガスの中である。高知から来たという単独行の60歳位の女性と話をする。今朝、バスで蓮華温泉に着き、五輪尾根を上がってきたという。健脚に感心する。

 4時前、朝日小屋着。週末とあって大混雑。40名以上の団体が宿泊しているとのこと。予約なしの客は白馬管理センターの方に泊る。6畳に6人だからありがたいものだ。従業員はキャンプ場に張った大テントで寝るらしい。群馬から来た4人グループと同室になる。一人は82歳の女性である。今日は北又から登ってきて、明日は栂海新道を歩くとのこと。こんな歳になっても、歩ける人はいるもんだと感心する。私などは80歳まで生きれば充分と考えていたが、こんな元気ならもうちょっと生きてもいい気になる。

 夕食は山小屋にしてはたっぷりあり、美味しかった。

 

/01

 朝5時出発。朝食は5時からなのだが、幸い15分前から食事可能となり急いでかき込んで出発する。今日が今回の山行の目玉である黒岩平の湿原を通る。

実は30年以上前に黒岩平に上がったことがある。当時、仕事場の仲間と5人で唐松岳から縦走して黒岩平を見て中俣新道を翡翠峡の方に下る計画を立てたのであるが(当時、栂海新道は避難小屋もなく、黒岩山から北は踏み跡程度の道だった)、不帰のキレットで一人が膝を痛めて、白馬の雪渓から下山した。このままでは悔しいので、小滝駅からタクシーで長栂発電所まで入り、翌日黒岩平まで往復した。中俣小屋も無く、発電所の導水管脇の階段を尾根まで上がり、一日黒岩平を散策した。その時見た、湿原の花々、遙かに見える長栂山の大きな雪渓が今も眼に残っている。

さて、朝日岳まで登り返すと、あとはダラダラとした下りの連続である。今日もガスがかかっており、見晴らしはきかないがお花畑を楽しみながらゆっくりと歩く。霧の中に浮かびあがるクルマユリ、ヒオウギアヤメが咲き乱れるアヤメ平の草原は去りがたいほどの美しさである。黒岩平の辺りは以前はもっと樹林帯の中を道が通っていた記憶があるが、道が付け替えられているのだろうか。今はずっと湿原、草原の中を通ってゆく。池塘の周りには水芭蕉やキヌガサソウが咲いている。

黒岩山、栂海新道の核心部はこれでお終い。ここから栂海山荘のある犬ヶ岳までは長い起伏の多い灌木帯を歩く。

北又の水場でソウメンの昼食。いつもの白石温麺だ。今晩と明日の行動用に水を3L汲んで、最後の登り。2時、栂海山荘着。立派な小屋だ。今日の泊まりは30名ほどか。小屋は広いので、ゆったりしたものだ。隣の北越山岳会の方たちに焼酎をご馳走になり、いろいろ話をする。

高知の女性は昼前に到着したとのこと。群馬の82歳の女性のグループは4時頃到着。お婆さんは元気だが、私と同年輩の男性がどうも足を引っ張っているようだ。

夕方、雲が上がり、視界が効いてきた。朝日岳、長栂山から今日通ってきた山稜が見える。結構な距離歩いたんだ。東には遙かに雨飾山、妙高あたり、高妻山などが眺められる。

 

/02

今日は最終日。いよいよ日本海、親不知まで歩く。海抜0メートルまで徐々に高度を下げてゆく、暑さと戦いながらのコースだ。今日はあいにくの快晴、今日だけは曇りの方がよかったのに。

530 出発。小屋のすぐ傍では、オトギリソウの群落が出発を見送ってくれる。

820 白鳥山手前のコル。頂上に白鳥小屋が見える。200m足らずの登りだが、思わずため息が出るぐらい高く思える。白鳥小屋、二階建ての立派な避難小屋だ。白鳥山から坂田峠まで、しばらくはブナ林の緩やかな下り坂だが、やがて金時坂の激下りとなる。途中、シキ割の清水で旨い水を充分に飲んで一息つく。

1100 坂田峠。標高650mまで下ってきた。坂田だとか、金時だとか、また近くに山姥の洞窟があるらしく、この辺りは山姥伝説の地らしい。暑さは下るにつれて益々ひどくなる。ここからは小さな凹凸はあるが、ひたすらに海抜0mを目指して歩くのみである。道は歩きやすい。

2時、親不知の国道に出る。ヤレヤレ、しかしまだ終点ではない。ここは海抜100m、荷物を置いて海岸までの階段を下りる。あれっ! ここは以前に来たことがある。途中のトンネルの廃墟にも見覚えがある。いつ来たのだろう? デジャブではない。とにかく海岸に出て、手を海水に浸す。これで栂海新道、完全走破完成だ。

国道までの登り返しのしんどかったこと!!