ウナギ道(出雲街道)サイクリング
2017.09

 江戸時代中頃、出雲の中海にウナギが大発生したらしい。地元では消費しきれず、大阪まで籠に入れて天秤棒で担ぎ水をかけながら生きたまま運んだ。
 安来を出発して出雲街道二部宿までほぼ一直線に進む(出雲街道は安来−米子−溝口−二部と遠回りになる)。二部から出雲街道に入り、四十曲峠を越えて美作勝山まで三日がかりで到着する。これをウナギ道と呼んだらしい。ここから旭川を川舟で岡山へ下る。岡山からは瀬戸内を大阪に船で入る。全部で一週間かかったとのこと。
 ウナギの養殖が盛んになるまでは大阪では出雲のウナギが主であり、いづも屋という屋号のうなぎ屋が二百軒もあったとのことだ。
 さて、このウナギ道を走ってみたいと思った。

9/8 昼前、安来駅を出発して、伯太川沿いに南下する。安来といえばどじょうだと思っていたがウナギもあったのだ。今日は快晴でもう秋の気配である。堤防の上の道を走る。紅白の芙蓉の花が美しい。伯太町母里から東に小さな峠で県境を越えて出雲から伯耆(鳥取県)に入る。日野川支流の法勝寺川流域だ。更に東へちょっと手強い坂を登ってゆくと道はループ式になっている。峠を下ると正面に伯耆大山が眺められ、出雲街道二部の宿に入る。 ここと次の根雨の宿の間には間地峠がある。道路はトンネルで越えるが、脇に古道がある。折角だから古道を越えよう。標高差100m程だから大したことはないだろうと、荷物を付けたまま自転車を押して登り出す。これがきつかった。大汗をかいた。やっとのことで間地峠。昔は峠の茶屋があったらしい。大休止。下ると根雨の宿だ。アッ、もう4時だ。本当は今日中に四十曲峠を越えたかったのだが、無理。早いがここで宿をとろう。聞いてみると、一軒だけ旅館があるとのこと。ヤレヤレ。

 安来駅出発 伯太川  芙蓉 
 
 白い芙蓉  出雲(島根県)から伯耆(鳥取県)に入る 路傍の地蔵 
ループ橋   伯耆大山を望む 二部から間地峠へ
間地集落の六地蔵  旧道に入る  出雲街道旧道 
間地峠  峠の茶屋跡  根雨の旅館 

 根雨はR181(出雲街道)で勝山、R180で明智峠を越えて新見、R183で鍵掛峠を越えて庄原と山陰から山陽へ出る交通の要衝で、昔は栄えた街のようでその名残が見える。しかし今は凋落が著しい。開いている旅館が一軒、食堂が二軒しかない。それと日野川のオシドリが有名だが今はまだ渡ってきていない。居酒屋で土地の人と話しながら、一杯やる。

走行コース https://yahoo.jp/PWRRvM

9/9 6時出発。朝霧の中、日野川支流の板井原川を上流へと遡る。しばらく行くと金持神社の案内がある。これはちょっとお参りしてゆこう。本当は「かもち神社」らしいが、なんか御利益がありそうではないか。誰の考えも同じで、たくさん絵馬札が掛かっている。 板井原集落(宿跡)を見て、国道をひたすら上る。根雨から400m登ると四十曲トンネル入り口(標高600m)に着く。ここを抜けると伯耆から美作へ入る。1800mの歩道なしのトンネルだ。これを抜けるのはちょっと味気ない。旧道を抜けよう。旧道は二つある。一つはトンネルが抜ける前の旧国道で、もう既にほとんど廃道となっているようだが、ネットで調べるとオートバイを押しながら通った記録がある。地理院地図では実線の道で四十曲峠と書かれている。他の一つが出雲街道古道でトンネル脇から直登する破線の道である。どうせ登るならこれにして昔の人の苦労を偲ぼう。標高差150m程で大したことはないだろう。

 根雨宿はずれ    R181を走る
朝靄の金持集落  金持神社鳥居  絵馬札 
 板井原川 板井原集落  四十曲トンネル入り口 

 間地峠で懲りたので、今回は慎重に荷物は全部肩に担いで、自転車にも輪行バッグのベルトを着けて吊り下げられるようにする。これで担いだり押したりして登る。松江の殿様もウナギ様も通った道だ。明治時代に改修して大八車で通れるようにしたとのことで予想外にいい状態だ。四十曲というだけあって、道はクネクネと緩い勾配で上がるように切ってある。ヨイショヨイショと小一時間で峠に上がることが出来た。まあ、空荷だと30分も掛からないだろう。峠からの下りは広いなだらかな地道で車のわだちがついている。森の中を下ってゆくと開けた舗装道に出て二ツ橋の集落だ。オミナエシなど秋の花が美しい。

古道登り口  ツリフネソウ  古道を登る 
大八車が通った名残がある  ジグザグの道  峠に到着 
     
峠からの下り  舗装道に出る  二ツ橋集落に出た 
     
 ヒヨドリバナかな? ノギク?  オミナエシ 

 短いが急な坂を登ると嵐ヶ乢(たお)、ここからは勝山手前までほぼ下り一方となる。後鳥羽上皇が流罪の途中休憩された遺跡を過ぎて下ってゆくと新庄の宿に着く。宿場の旧道は日露戦争記念の桜並木が続いている。中に本陣があり、「出雲少将宿」の看板が掛かっている。道の駅に立ち寄って名物の牛餅丼を食べたいと思ったが、現在改装中でお休み。残念。ここから出雲街道(R181)は旭川支流の新庄川に沿って下ってゆく。美甘宿は素通り。国道脇に旧街道の跡が所々に残っている。首切り峠なんて気味の悪いのもある。江戸中期に大規模な一揆があった名残らしい。
 鬼の穴。川に下りてみる。石灰岩で出来た奇勝だ。水がもっと澄んでいたら言うことないのだが。
 少し下ったところから川筋を外れて杉ヶ乢を越えて勝山へ下る。近道だ。下ると蒜山原を源流とする旭川本流に出る。ここが勝山の町だ。川岸には石段があり、ここから岡山へ下る川舟が出た港だろう。町も昔の風情を残した通りがあり、観光客が散策している。

秋の花々 1 秋の花々2  秋の花々3 
秋の花々4  秋の花々5  秋の花々6 
後鳥羽上皇旧跡    凱旋桜 
新庄宿本陣 「出雲少将宿」の看板  新庄川の平野  尼子勢に敗れた武将の切腹の場所 
鬼の穴の奇勝  勝山 旭川沿いの船着き場  勝山市街 

 昨日、四十曲峠を越えられていたら、ここから西に走り広島県福山辺りを目指そうと考えていたのだが、今からでは時間が掛かりすぎる。トコトンウナギに付き合って、旭川沿いに岡山へ下ろう。
 勝山の次の久世宿から出雲街道はほぼJR姫新線に沿って姫路へ向かうが、ここから南へ忠実に旭川に沿って走る。美作落合を過ぎると旭川は山の中へと入ってゆく。県道30号線で、人家はほとんど無い。山峡の道をひたすら走っていると、ダムの長い湛水区域となる。旭川は大河だと実感する。やがて旭川ダム。ここからは流域はたいらになり、人家も増えてくる。もう岡山市に入っている。R53に入ると交通量も多くなる。もう夕刻に近くなってきた。どこかにねぐらを見つけなければと思うが、岡山市とはいえ郊外では宿泊施設は見当たらない。国道から少し入った小さな神社の境内にツエルトを張らせてもらう。幸い近くにコンビニもある。

 久世辺りの旭川 山峡へと入ってゆく 山の中の神社で一服 
旭ダム ボートハウス?  堰堤  ダム下流の流れ 
旭川の広い流れ   吉尾八幡 境内で一泊 


走行コース https://yahoo.jp/EgE6mR

9/10 今日も快晴。再び旭川川岸に戻る。懐かしいカバヤ食品の工場がある。河岸のなだらかな道を気持ちよく走る。ここはサイクリングコースのようでサイクリストが多い。そう言えばずっと川沿いに走っているのに川の水に触れていない。川岸に下りて流れに手を浸す。
 ようやく川は市街地に入る。カヤック遊びや投網を打つ人を眺めながら下ってゆく。あらっ、旭川は岡山城のお濠になっているんだ。もう、河口は近い。残念、河口付近は工場の敷地になっていて入れない。対岸を走ればよかった。

 河岸の道 岡山市街遠望  岸辺に下りて手を浸す 
     
 カヤック遊び 投網  山陽本線の鉄橋 
     
 岡山城(烏城)の壕となった旭川 対岸の後楽園   相生橋水位観測所
     
 旭川河口(この辺りから大阪へ向かったか?) 住吉神社  河口部の工場 

走行コース  https://yahoo.jp/aXHOs2