台湾紀行 (2018.03)



 家内と台湾ツアーに参加する。「台湾縦断 三つの景勝列車」というテーマの8日間と台湾旅行にしては長いツアーだ。

3/5 関空より台北桃園空港へ。車で台北松山空港へ向かい、東京組と落ち合う。全部で15名、88歳から60半ばまでの男女で我々はほぼ真ん中の年代である。
 ここからほぼ一時間の飛行で台東空港に到着する。夕闇の中、ホテルに着く。娜路弯ホテルというまあ台東では一番のホテルのようである。娜路弯(ナルワン)とは原住民の言葉で「こんにちは」の意味らしい。ロビーの木彫りの原住民の姿が目を引く。

   
ナルワンホテル   原住民の木彫り


3/6 快晴である。台東は東と云っても台湾のほとんど南の端で中央山系の東側にあるというだけである。この辺りは卑南渓のデルタ地帯でなかなか広い平野が拡がっている。暖かいのでマンゴー、バナナ、パイナップル、仏頭など果物が名産らしい。
 今日は台東から特急列車「自彊号」で南廻線を通って高雄に向かう。暫くは平野の中を走る。周りは果物畑のようだ。温泉で有名な知本を過ぎると山が迫ってきて人家はほとんどなくなり、線路は崖に沿っている。長い海岸は太平洋の波を受け、日本の熊野灘のような印象である。特急と云ってもノロノロと走り各駅停車と変わらない。
 やがて列車は山の中へと入ってゆき山脈を横断して台湾の西側に出る。水田、果樹園、養魚池などがある広々とした平野を走り、高雄に到着する。約3時間の列車の旅であった。

   
台東駅と自彊号  太平洋へ流れ込む川を渡る 
   
海岸線  中央山脈を越える 
   
 養魚池 バナナ畑 


 我々の乗るバスは台東からスーツケースを積んで既に到着しており、バスに乗り込んで市内観光をするが、台湾第一の工業都市であるがたいした見所はない。蓮池潭公園と地下鉄に乗って名物の駅を見て、さっさと台南へと向かう。
 台南は明末から清代にかけて、台湾治政の中心地であった。明末には鄭成功が此の地に拠って活躍した。
 まず孔子廟を見て、中心部にある林百貨店を訪れる。台湾はたかだか400年と歴史が浅く大して見るものがない。

   
蓮池潭公園 (高雄)  
   
  孔子廟(台南) 


3/7 今日も快晴であるが、気候はそれほど暑くなく気持ちよい風が吹いている。
 まず、赤嵌楼を見物。ここはオランダが作った要塞であったが後に鄭成功が居城としていた。当時のものとしてはレンガの城壁が残っているが、鄭成功がオランダ人と開城の会見をしている銅像が面白い。
 次に延平郡王祠、鄭成功を祀る祠で日本統治時代は開山神社いう神社であった。鄭成功は台湾人の間では絶大な人気があるようだ。境内には南洋桜が満開で、ピンクの花が美しい。桜というが、実はマメ科の花で桜とは似て非なるものだ。

   
赤嵌楼   
   
鄭成功和議の銅像   鄭成功
   
南洋桜   南洋桜


 安平古堡、海岸にあるオランダ人が作った要塞、後に鄭成功が居城として用いた。オランダ時代の赤煉瓦の城壁が残っている。また、傍には大きな媽祖廟が建っている。媽祖廟周辺の繁華街をブラブラする。果物屋で台湾バナナ、仏頭、ナツメを少しずつ買う。

   
 安平古堡の城壁  
   
   


 嘉義へ向かう。市内で昼食、阿里山林業の木造日本人宿舎の観光施設をちょっと見て、故宮博物院南院へ向かう。2015年に新しく作られた故宮博物院南院は美しいモダンな建物であるが、入り口から建物までは実に長い。中も大きいが、アジア全体の美術を展示しているようで展示内容は本院に比ぶべくもない。半分以上は海外の美術館から借りてきて展示しているようである。今回は高麗青磁の展示が大きな部分を占めていて、ほとんどが大阪の東洋陶磁博物館から借りてきているものであった。逆にこれだけ貸しても、平気な東洋陶磁博物館の凄さに感心した。

   
嘉義  故宮博物院南院 


さて、本日最後のイベントは「ランタン祭」見物である。全く知らなかったのであるが、毎年3月に台湾のどこかの都市で行われるイベントで今年は嘉義で行われるとのこと。要するに、青森のねぶたのような造形物が広い会場に数知れず飾られ、大勢の見物客が台湾中から見物に来るものである。ねぶたよりはずっと巨大なものもあり、美しいことは美しいが所詮張りぼてに灯りがついているだけのものである。屋台で晩飯を食べて、バスで台南のホテルまで帰る。

   
   



3/8 今日はツアーのハイライト、阿里山観光である。生憎の曇り空。これから天気は崩れてゆくらしい。
 予定では嘉義から呼び物の森林鉄道に乗って、標高2300mの阿里山まで登ってゆくのであったが、ツアー出発数日前に鉄道が工事のため運休することになったらしい。開通は運悪く数日後とのこと。このツアーを選んだのはこれに乗れるのが大きな理由だったのに残念。森林鉄道は日本統治時代に阿里山のヒノキ(明治神宮の鳥居もこれ)を搬出するために作られたもので、三重ループで高度を上げてゆくので有名。
 やむなく、バスで登ってゆく。檳榔樹の林の中、高度を上げてゆくと尾根に出る。茶畑が拡がる。阿里山高山茶の茶畑だ。ちょっと、インドのダージリンに似ている。

   
桜かな  檳榔樹の林 
   
阿里山茶畑  阿里山の山並み 


 森林鉄道の上の終点、奮起湖駅に立ち寄る。三重ループの模型が見事。

   
奮起湖駅周辺  奮起湖駅 
   
機関車展示館 (現在はディーゼル) 三重ループの模型 


 更にバスは小雨の中を延々と走り、山上ターミナルに到着。ここから迎えのバスでホテルへ。半分は山小屋といった感じで、本格的な装備の登山客がいる。玉山へ登るのかな。 小雨の中、遊歩道を散歩する。スギ、ヒノキの森、大きな切り株がある。戦時中や民国時代に乱伐が行われ、巨木は少ないようだ。高山で冷え込んでいるが、桜が満開だ。散歩を楽しむ。

   
   
   
   山中の道観
   
   
   
   

3/9 未明、阿里山の頂上、祝山に登り日の出を見るつもりだが、雨は止んだものの濃霧につつまれてご来迎が見える可能性はまずない。祝山への森林鉄道支線で、20分程で祝山駅に着く。展望台には200人ほども観光客が集まっているが、すっぽりと濃霧につつまれている。次第に明るくなるのを一時間ほど待って、帰りの列車に乗る。

   
台湾の鉄道最高地点 祝山駅 
   
濃霧の中、日の出を待つ人々  下りの列車 

 昨日、登ってきた道を下り、次の目的地、日月潭に向かう。途中、阿里山高山茶の店に立ちよりお茶を買う。ここで買った高山茶はちっと高かったが美味しかった。

   
ホテルの前のシャクナゲ  茶店の原住民の売り子 

 嘉義まで下り、高速道路で南投に向かう。途中、古坑サービスエリアで休憩するが、ここの駐車場の並木が満開の黄色い花をつけている。その鮮やかさに息を呑む。黄金風鈴花というのだが、南米原産のノウゼンカズラ科の花のようだ。

   

 南投から、東へ川に沿って東へ走り山の中へ入ってゆく。しばらくすると湖に出る。日月潭だ。湖畔を走り東側の伊達邵という集落に着く。今は観光地化しているが、もとは邵族という原住民の集落だったらしい。賑やかな老街を通り抜ける。鳩ぐらいの大きさの竹鶏の丸焼きが店先にぶら下がっている。竹鶏といえば日本のコジュケイだと思うが、美味しそう。それと小米酒という粟から作った酒が名物らしく並んでいる。これも試飲してみたいが、ツアーの不自由さでなかなか思い通りにならない。
 今夜の宿は、湖畔の総檜造りのホテルだ。建物中、ヒノキの香りが立ちこめている。今回のツアーで最高の宿であった。

   
老街  竹鶏を売っている。 

3/10 今日は快晴。まず、日月潭の遊覧船に乗る。日月潭は周囲30km程で台湾最大の湖らしい。サイクリングで一周に丁度適当だとのこと。穏やかな湖面を渡り、湖に突き出た岬にある玄光寺を尋ねる。参詣道で座禅を組んでいるのは法輪功の信者だ。今回廻った寺院で必ず見かけたから、信徒数はかなり多いようだ。寺の境内から見渡すと、湖面に丸い小さな島が見える。原住民の聖地とのこと。

   
   法輪功の信者
   
原住民の聖地の島   

 波止場に帰り、次は文武廟へ。湖畔の高台にあるきらびやかな道教寺院で、日月潭の展望が素晴らしい。

   
 巨大な狛犬 本殿 
   
 関羽と岳飛  
 

 日月潭に別れ、川沿いに台中市に下ってゆく。この辺りは1999年の9.21大地震の震源地で大被害を受けた場所だ。先ほどの文武廟も崩壊したらしい。川沿いの崖も崩れたとのこと。

   

 台中市内へ。国立台湾美術館のレストランで昼食。美術館は台湾現代美術を展示しているようだが、時間がなく庭園を散歩したのみ。

   
車窓風景-バナナ  車窓風景-変な看板 
   
国立美術館周辺は近代都市だ   

 台中市の海岸沿いにある広大な干潟、高美湿地を見物。台湾のウユニ塩湖と言われるそうだが、ちょっと違う。しかし、干潟に西日が輝く景色はそれなりに美しいが。

   
  シギかな?
   
岸辺の寺院  天麩羅はテンプラと発音するんだ。薩摩揚げらしい。 

 夕方、暗くなって、台中駅から新幹線で台北に向かう。高鐵(新幹線のこと)台中駅は近代的で日本の新幹線の駅とよく似ている。構内の食堂は丸亀製麺や寿司、ロイホ、台中食堂など半分は日系レストランだ。

   

3/11 チョコッと台北市内見物。何度も来たことがある龍山寺。迪化街。古い問屋が並ぶ町並みでレトロな感じがいい。ナッツなどを少し買う。

   

 九份に向かう。台北の北、基隆近くにある小さな町で日本統治時代は金鉱で栄えたが、その後、金が採れなくなって寂れた。しかし、映画「悲情城市」の舞台となって観光地化した。

   
九份老街   
   
鶏籠山(基隆山)  遠くに見える墓地 (一見、住宅地に見える)
 
基隆方面展望 

 午後遅くなって十分瀑布に向かったが、もう閉園されていて全貌が見えなかった。落ち口が眺められたが、まあこの程度の滝は日本に幾らでもあるといった程度か。
 今日最後のイベントとして、十分老街でのランタン上げだ。四人で四面に願い事を書いて中に火をつけて熱気球のように上げる。夕暮れの空にランタンが上がっていくのは、何かノスタルジックでもの悲しい心持ちになる。

   
   
  十分老街 

 今夜の夕食は、最後とあって豪華に台北101ビルの85階のレストランだ。食事も旨かったが。夜景が素晴らしい。

   

3/12 台湾最後の日だ。午前中、故宮博物院を見学する。2時間ほどしか時間がない。今回で三度目なので、翡翠の白菜などはチラリと見るだけで、書と絵画を中心に見た。書は王羲之、宋代の四大書家(蘇軾、黃庭堅、米芾、蔡襄)、張即之、趙孟頫など堪能した。
これで今回の台湾旅行はお終い。