西南四国サイクリング(2019.04)


 四国の道路地図を舐め回すように見ていると、南西四国の海岸を走ってみたくなった。しかし、山もちょっと走りたい。というわけで今回のサイクリング計画が出来た。もう四月だから、シュラフは要らないだろう。

4/02 早朝、車で新大阪駅まで自転車、荷物を運び構内の隅っこに置いて帰り、空荷で駅まで出直す。
 岡山からは、土讃線を特急「南風」で高知へ向かう。私が子どもの頃、「南風」は準急だった。その頃、四国には急行は走っていなかった。そのうち、「南風」は急行、特急と格上げされたのだ。
 途中、我が故郷の阿波池田を通過する。桜が満開だ。両親の墓は線路のすぐ傍にあり、ちょっと頭を下げて今回お参りしないことを詫びる。やがて列車は吉野川を渡る。目の下に私の通った中学校が見える(今は上部にあった小学校が移ってきて、中学校は統合されてどこかへ行った)。吉野川は今は池田ダムの湛水域となっているが、当時は清流が流れていた。ちょっと自慢の風光明媚な場所にある学校だった。勿論、当時は木造の古びた校舎だったが。

   
 故郷の駅近く 我が母校の中学校跡 

 小歩危・ 大歩危の風景を楽しみながら、「南風」は高知へと向かう。高知ですぐ中村行きの特急「あしずり」に乗り換える。到着は1時過ぎだ。長い。北へ向かったら東北まで行けるぐらいだ。
 急ぐ旅ではなし、ゆっくりと自転車を組み立て四万十川を上流に向かって走り出す。この辺りの四万十川は自転車で一度、カヤックで一度、車で何度か走っているのでお馴染みだ。なだらかなR441をノンビリ走る。それにしても過疎地域だ。集落も少なく、店舗はほとんど見かけない。今晩は手持ちのアルファ米の晩飯となりそうだ。中流の集落、口屋内から支流の黒尊川に入る。今回は黒尊川を上流に辿り、鬼ヶ城山系を越えて宇和島に抜ける計画だ。黒尊川は源流まで30kmに渡る長大な支流で途中幾つかの集落がある。山中に入り日が陰ってくると結構寒い。早めにキャンプ地を探そう。玖木という集落の公民館のゲートボール場で少し早いがテントを張る。トイレ、炊事場がついていてなかなか便利だ。
 シュラフカバーにダウンの上下でもぐり込む。夜中、厳しく冷え込む。

   
沈下橋  四万十川の流れ 
   
玖木公民館の広場  テントを張る

 
4/03 あまりの寒さに寝ていられなくなり、明るくなるとすぐに出発する。路傍の民家はまだ眠っているようで人の姿は見られないが、春の花木が迎えてくれる。黒尊川は夏の水遊びが人気のようで、カヤックのコースや遊歩道があるようだ。川筋の道は上りを感じさせない程度の勾配で少しずつ高度を上げてゆく。やがて、川筋を離れて山腹を稜線目指して登り出す。きれいな舗装で勾配もそれほどきつくない。やがて、稜線の峠(850m)にでる。ここは高知・愛媛の県境だ。

   
 民家の花々 黒尊川の清流 
   
 路傍のミツマタ  源流近し
   
 黒尊川流域を見下ろす 稜線まで上ってきた 


 先の方を見ると、道は鬼ヶ城山の山腹を縫ってまだまだ登っている。最高地点の鹿のコルまであと200m程の上りだがたいして急な上りはない。鹿のコルに到着(1000mちょっと)。結構寒い。下る途中で出合った林道を散歩していた人の話では、一昨日はこの辺り一面の霧氷で桜より美しかったとのことだ。ここから鬼ヶ城山、三本杭までの往復は3時間ぐらいで行けそうだが、自転車用のビンディングシューズでは辛いだろう。
 鹿のコルからは宇和島市街まで大下りだ。曲がりくねった急な坂でこちら側から上る自信はない。下るにつれて暖かくなり、路傍の桜が美しい。黒尊林道が終わる直前、谷向かいの山を見上げると豪華な山桜の競演だ。新芽の赤が目立って、名残の桜の風情だ。一週間まえだったら最高だったろう。林道はR320と合流して終わり、後は少し交通量の多い国道を下ると宇和島市街だ。

   
正面は鬼ヶ城山か  眼下の宇和島市 
   
 ヤマザクラ  ヤマザクラ
 
名残の山桜 

 朝5時の朝食だったので、大分空腹だ。ちょっと早めの昼飯は宇和島名物の鯛飯にしよう。通りすがりの女子高生に教えてもらい、駅前の食堂に入る。メニューを見ると、名物は鯛飯の他に「さつま汁」という郷土料理があるようだ。どちらにしようかなと迷っていると、両方を少しずつ食べる定食がある。これにしよう。やっぱり、鯛飯は旨かった。満足満足。さつま汁は鯛飯に較べるとちょっと落ちる。
 さて、ここからは海岸沿いに足摺岬を目指そう。まずは先日テレビで見た遊子(ゆす)の段畑を見よう。
 海岸を縫うように道が続いている。大した上り下りはないし、車の通行も少ない。ノンビリと走れる。波の静かな西予の湾内は養殖のイカダが一杯だ。鯛とか、真珠とかかな。シラスを干している。彼方には午前中に走った鬼ヶ城連山が意外に高いところに見える。1000mの高度差だからな。
 やがて、遊子の段畑が見えてきた。これはなかなかの奇観だ。すべてジャガイモが植えられている。名産らしい。畑の手入れをしている人に聞くと、段畑は明治期に築かれたらしい。急な段になっていてアルミの梯子で上り下りしている。これだけ急だから当然一枚の畑の巾は狭い。たった一畝しかないものもある。しかし、これだけの石をどこから運んできたのかな。石垣にはホトケノザが可憐な花をつけている。
 さて、今日は何処でキャンプをするかな? 海岸沿いに南下の途中、A-Coopで食料と酒を仕入れ、キャンプ適地を聞くと10km程先の南楽園という公園を勧めてくれた。
 南楽園パークの広い駐車場の一角にある東屋にテントを張る。面倒なのでフライは付けないで寝たが、外から見ると何か下着一枚のような感じだな。

   
養殖のはしけ  シラスを干す 
   
鬼ヶ城連山を望む  どこの港だったかな? 
   
 段畑  すべてジャガイモ
   
 段畑 ホトケノザ
   
一路、キャンプ地へ   南楽園

4/04 今日も快晴だ。少しゆっくりで7時出発。
 南楽園はヒナマレの広大な庭園のようだが、勿論この時間にはまだ開園されていない。周りを取り囲む壕の桜が満開だ。
 ここから南下するメインの道路はR56だが、出来るだけこれを避けて海岸沿いの道を走る。遠回りだが県道287を走る。海岸沿いの道も明るくて爽やかでなかなか良いもんだ。やがて、県道はR56と合流してここからは国道を走らざるをえないが、四国の果てであり大した交通量はない。山の上には名残の山桜が美しい。 愛南町の市街に入る。ここには紫電改の展示館がある。これは見なくちゃ。これは豊後水道の海底に沈んでいるのが発見され、引き上げられて岡の上に展示されている。
 シコシコと馬瀬山山頂に上る。150m位の上りだが、なんでこんな山の上に作るんだと文句が言いたくなる。しかし周りの公園は桜がきれいだ。展示館に入ると一杯に紫電改が収まっている。なかなかの偉容だ。プロペラが曲がっているのは海面に激突した衝撃によるものだろう。日本で展示されているのはこの一機のみとのこと。外に出てみると山頂に展望タワーがある。回転するエレベーターで上にのぼる。360度の展望は絶景だ。
 ここからさらに西へ向かうと海中展望船が出ている港があるが、何か元気がなくなった。もうパスしよう。

   
南楽園の壕   小さな漁港を過ぎる
   
山の新緑と桜  紫電改 
   
展望塔から   展望塔から

 県道7号線で高知県宿毛市に向かう。敦盛という浜からいきなり山中に入り急登で200mまで上る。見た目はそれほどの坂とも思えなかったが、上れない。押して上がる。ここを過ぎると後は海を見下ろす中腹を通る快適な道だ。車の通行は全くない。遠くに山桜、路傍にスミレ、ムラサキケマン?、鮮やかな色のツツジなどの花を愛でながら気持ちよく走る。県境を越えると宿毛市街まではもうすぐだ。
 家に電話すると明日中に帰ってこいとの家内からの帰還命令だ。ここから大阪まで半日はかかるから足摺岬へ向かうのは無理だ。急に気持ちが萎えてしまった。まだ、大堂海岸、竜串、見残しなどの名所が残っているがもう無理だろうな。宿毛駅近くのビジネスホテルに泊まって、居酒屋で旨い魚で一杯やって旅の終いとしよう。

   
タツナミソウ?  県道 
   
山桜  小さな漁港 
   
宿毛湾  ツツジ 

走行ルート
第一日 https://yahoo.jp/j6uBdF
第二日 https://yahoo.jp/rwvJnc
第三日
 https://yahoo.jp/A8399l