花の秋田駒ヶ岳 (2020.08)
五十年前、八幡平より秋田駒ヶ岳までの縦走を試みたが、雨にたたられ乳頭山から下山した。また2017年には岩手山から縦走を計画したが、大雨の予報で八幡平の方へ逆走した。
そんなわけで長年のあこがれの山でありながら、まだ登ったことがなかった。今年こそ念願を達成するぞ。地図で調べると、国見温泉から登ると簡単なようだ。それと国見温泉の緑色の湯にも一度入ってみたい。少し足を伸ばして千沼ヶ原の湿原も見たい。ということで3泊4日の行程が決まった。
7/15 新幹線で田沢湖まで。国見温泉まではタクシーしか足がない。3時過ぎ、国見温泉到着。国見温泉には石塚旅館と森山荘の二軒の宿があるが、今日は石塚旅館の方は休館とのことで、森山荘に投宿。早速、温泉に入る。まず露天風呂。下に小さなペット専用の浴槽があり、何匹かの犬が入浴している。なるほど不思議な色の湯だ。重金属の色かと思っていたが、流入している湯は透明でコップを置いているので飲めるようだ。説明によると湯の中に生育している藻の色らしい。露天風呂はぬるめ。室内の湯に入り直す。こちらは適温である。
夕食は岩魚の塩焼き、山菜、きりたんぽなど、山の湯宿らしい献立で特に美味と云うほどのことはない。
食後、この宿の古い写真集を眺めていると、88歳のお婆さんが出てきて、この宿の古い話を聞かせてくれた。
国見温泉 森山荘 | 緑の湯 | 宿の裏のナナカマドの大木 |
7/16 小雨が降っている。今日はチョコッと歩くだけなのでゆっくりして8時出発だ。霧につつまれたブナの樹林帯の中の道を登り出すとすぐにハクサンシャクナゲの出迎えだ。しっとりと雨に濡れた薄いピンクの花が美しい。次から次へと花が出てくる。1時間ほどゆっくりと歩くと灌木帯となり尾根に出る。300m程の登りだ。
ブナ林の登山道 | ハクサンシャクナゲ | コミヤマハンショウズル |
赤いカエデのプロペラ | ヨツバヒヨドリ | カラマツソウ? |
なだらかな外輪山(横長根)を少し登ると、道は二つに分かれる。一つは尾根を登って大焼砂から横岳に至る道。ここはコマクサの大群落があるようだ。もう一つは斜面を横切ってゆく馬場の小路(ムーミン谷)だ。どうもここを歩かないと秋田駒へ来たとは云えないらしいのでこちらのコースを取る。いきなり火山礫の斜面はコマクサで覆われている。ガスがかかって山の景色は全く見えず。花も遠くは霞んでいる。
横岳と小岳の間の谷間に入ると植生は豊かになり、多くの花が見られる。秋田駒ヶ岳高山植物帯だ。花の多さに酔いしれる。ガスで展望がきかないのが残念だ。
急斜面を登ると稜線に出る。この辺りはニッコウキスゲが咲き乱れている。稜線から男岳はすぐだが登っても全く展望なしなのでパスしてすぐ下の阿弥陀池に下る。今日の宿泊予定の阿弥陀池小屋には昼前に着いた。立派な小屋だ。コロナのため、緊急以外では宿泊禁止と書いているが、他に泊まるところもないしここで泊まる登山客は私以外にはいないだろう。。天候がよくないため、小屋の中で昼食をとっている人が多い。
いくら展望がきかないといっても最高峰の男女岳(おなめ)には登らないわけにはいかないだろう。標高差100m程の道をブラブラと登る。三角点にタッチ。八合目の最終バスは5時なので3時を過ぎると山には誰もいなくなる。
今回はシュラフを持ってきていないが、小屋には毛布がたくさん置いてある。
夜は少し冷える。
コマクサの咲く斜面(拡大写真) | コマクサ | エゾツツジ |
エゾツツジ | チングルマ | |
チングルマの花の群落(拡大写真) | ハクサンチドリ | ムシトリスミレ? |
ムーミン谷を行く | チングルマ(拡大写真) | シラネアオイ |
谷一面を覆うエゾニュウ? | ウサギギク | 尾根への急斜面 |
ニッコウキスゲが現れた (拡大写真) | ミヤマダイコンソウ かな? | ハハコグサ? |
7/17 やっと晴れた。5時出発。ちょっと登ると横岳への稜線だ。見下ろすと昨日通ったムーミン谷が眼下に見える。女岳、小岳、その奧の横長根、ずっと奧の山並みは和賀山塊だ。反対側は雲海が広がり、一番奥に聳えるのは森吉山だろうか。和賀・真昼縦走や森吉山・八幡平縦走を懐かしく思い出す。
横岳から焼森、ここで八合目駐車場への道を分けると、道は悪くなり、なだらかだが笹が覆い繁っている。昨日の雨で雨具はびしょ濡れとなり、カメラも曇ってきた。湯森山、宿岩、笊森山と花を愛でながら坦々と歩く。笊森山山頂に立つと千沼ヶ原の広々とした湿原がすぐ下に広がっている。
千沼ヶ原。ここは上下二つの湿原からなっている。荷物を置いてゆっくり散策する。カメラが湿気で曇っていて綺麗な写真が撮れない。点々とトキソウやサワランが咲いている。
千沼ヶ原から笊森山の斜面をあるいて乳頭山への稜線に出る。ここにはミズバショウが咲いていた。乳頭山への登りは200m足らずの楽な登りだ。岩がポツンと出ているがあまり乳頭という風には見えない。
乳頭山頂上に立つ。眼下遙かに田沢湖、すぐ下に田代平と今夜泊まる田代平山荘、その上遙かにカッパの頭みたいに頂上が平らな湿原の大白森、そのまた遙かに森吉山が見える。大白森は以前に通ったはずだがガスにつつまれていたか、全く記憶にない。もう一度訪ねてみたいがもう無理だろうな。
下ればすぐに田代平山荘だ。このまま、乳頭温泉に下ってもよいが、もう一日山の雰囲気に浸っていたい。湿原の中の静かな佇まいの山小屋だ。残念ながら水場がない。前の湿原の水を汲んで沸かすしかない。途中の流れで汲んでくればよかった。
7/18 今日もよい天気だ。小屋の窓から日の出を見る。青空に雲も美しい。出発前、小屋の前の池塘から小屋の写真を撮っておく。
7時前に出発。田代平から孫六温泉への下り道を取る。粘土の滑りやすい道。ストックを使って慎重に下る。2時間弱で孫六温泉へ。孫六の露天風呂でこの旅の締めくくり。