木曽の渓谷 田立滝・柿其渓谷・阿寺渓谷
2023.11 

 木曽谷には三つのポピュラーな渓谷がある。どれも半日程度のハイキングコースだ。今年80歳になり、しかもトレーニング不足とあっては単独行でリスクのあるコースは取れない。まして今年の夏は異常なほど山岳遭難が多かった。ここで事故など起こすとどんな非難を受けることやら。今回のコースでは田立の滝だけが登山道であるが、ほかは林道を歩く安全なコースだ。
 計画段階で地図を見てみると、田立の滝から尾根を越えて柿其渓谷へ繫がる路がある。途中で避難小屋泊まりで歩くとなかなか楽しいコースになりそうだ。しかし、調べてみるとこのコースの山道はここ数年刈り払いが行われておらず、通行不能らしい。ということで断念。 

11/05 
午後自宅を出発、途中で食料を仕入れて、田立の滝登山口の駐車場に夕方到着。標高800mを越える場所で静かなものだ。車中泊。

11/06 朝7時出発。この辺りは秋たけなわである。田立の滝は日本の滝百選に入っているようであるが、流れの水量は意外と少ない。山道は流れを離れて山腹を200mほど登って行く。
 やがて、道は流れに近づいて、らせん滝、洗心滝が現れる。綺麗ではあるが、水量が少なく迫力がない。次いで、霧ヶ滝。だんだん見事になってきたぞ。すぐ上にこの渓谷の主瀑である天河滝(てんがたき)が現れる。さすがに見事である。大きな花崗岩の岸壁を流れ下る様は昔見た宮崎県の行縢の滝を彷彿とさせるが、ちょっと小型だ。高さ40mとあるが、そんなに高いかな?雨のあとの水量が増えている時に見てみたい。その上にある不動滝。これで田立の滝の滝の核心部は終わりである。

   
 登山道入り口 入り口近く
   
洗心滝 霧ヶ滝
   
天河滝  天河滝 
   
 天河滝の落口 不動滝 

 不動滝を過ぎると谷は穏やかになり小滝や淵が続く。 道はしっかりとした桟道が組まれていて、安心して歩ける。丸淵から谷を離れて道は山腹の林道へと上る。林道を上流へ辿ると、天然公園から柿其渓谷へ下れると案内板には書いてあるが、残念だ。また天然公園からの山稜は奥山界岳へと続いているがこれは残雪期でないと無理だろうな。

鶴翼滝だったかな? そうめん滝?
   
箱淵  丸淵 

 林道を下って行くと、素掘りのトンネルが現れる。これは昭和初期の森林鉄道の名残だとのこと。不動滝の上部に不動岩があり、そこからの展望が素晴らしい。中津川へと続く木曽谷と遙か彼方に聳える恵那山。不動岩からまた谷へと下る。丁度不動滝のところだ。あとはもと来た道を駐車場へと帰るだけ。下りは躓くと怪我する恐れがあるため、ストックに頼りながらそろそろと下って行く。
 駐車場から下る途中にある支谷にかかる「うるう滝」に寄る。まあ一見の価値はあったが。

   
素掘りのトンネル  不動岩からの展望
   
鶴翼滝に下ってきた   うるう滝

 さて、明日は阿寺渓谷を探訪しよう。須原のスーパーまで走り、夕食を調達して、阿寺渓谷の中程にある駐車場で車中泊とする。国道沿いの道の駅は車の騒音がひどいので敬遠する。
 夕食を食べる頃から、雨がひどくなる。

11/07 朝になっても雨は止まない。阿寺渓谷は木曽川との合流点から上流のキャンプ場までの6.5kmの舗装された林道を往復するので自転車を持ってきているが、この雨では走る気はしない。国道沿いの「道の駅 大桑」まで下って時間を潰しながら、今後のことを考えよう。
 雨はしばらく止みそうにないので、道の駅にあった名所案内にある寺を廻ることにする。まず、岩出観音にお参りする。小さいながら清水寺のような舞台を持った観音堂で大きな楓の紅葉が雨に濡れて美しい。
 次いで、近くの須原の旧中山道沿いにある定勝寺を訪ねる。臨済宗の寺で木曽三寺の一つとされている。立派な庫裏だ。山門下の紅葉も美しい。
 雨が止んで、青空が見えてきた。予報でも晴れに向かうようだ。木曽川河畔にある阿寺渓谷観光用の駐車場で自転車を組み立てる。

   
岩出観音の楓 岩出観音
   
定勝寺 定勝寺入り口

  天候は完全に晴れてきた。久しぶりのサイクリングで身体が慣れていない。上流へ向かってたいした上りとは思われないのに息が切れる。雨後の渓流は増水しており、少し濁っているが迫力満点だ。辺りの紅葉は今が最盛期で雨に濡れた紅が美しい。
 3キロほど走ると昨夜泊まった駐車場に出る。駐車場脇にひときわ鮮やかな紅葉の二本の樹木がある。ハナノキだ。これはこの渓谷の奥にある天然記念物の古木より挿し木で増やした里帰りハナノキというらしい。また島木赤彦がこの地で詠んだ和歌の歌碑が建っている。「山深くわけ入るままに谷川の水きはまりて家一つあり」。更に3キロほど走ると終点のキャンプ場だ。ここで車両止め。自転車も入れない。ゲートをすり抜けて奥にある天然記念物のハナノキを見ようと歩くが、1キロほど歩いたところで諦める。どれだけ歩くと辿り着けるか不明なので元気を失う。帰りに里帰りのハナノキの所の説明板をよく読むとゲートから1.5キロと書いてあった。しまった! あとちょっとだったのに。
 帰りに山腹を見上げると、雨のあとに現れるという雨現の滝が眺められた。ラッキーだったか。しかし特別な感じはしない程度のものだ。
 さて、明日は柿其渓谷探訪だが、昨夜の駐車場が気に入ったので今宵もここで宿泊しよう。

阿寺渓谷入り口 雨後の渓流
   
紅葉は最盛期 森林鉄道の鉄橋跡
   
   ハナノキの紅葉
   
島木赤彦の歌碑  六段の滝 
   
   
雨現の滝   

11/08 早朝、柿其渓谷入り口の駐車場を出発。今日の探索路は駐車場の少し上を通る林道だ。この道は林業専用で一般車両は入れない、この道を約6キロ上流の忠兵衛峡まで往復だ。
林道は渓谷の大分高いところを通っていて、流れは遙か下の方だ。所々、流れが望めるが、まだ日差しは届かない。
 少し歩くと、下へ下る小径があり「ねじだる」なる場所に行けるらしい。ここは下って行かないと、見所はないぞ! 15分ほど下ると、凄いゴルジェが現れる。ねじだるの意味が分かった。激流が渦のように捻れている。吸い込まれるような迫力である。ここにもあるハナノキの古木は見落とした。
 宝剣岩を見上げ、暫くすると霧ヶ滝。端正な滝だ。スローシャッターで撮ってみる。林道を歩いているだけだとあまり流れが見えない。雷滝に下りてみる。
 いよいよ終点の忠兵衛峡。今はこの橋も通行止めのようだ。パンフレットにはこの橋を渡って尾根を登ると田立の滝に出られると書いてあるが、道は刈り払いが行われておらず、廃道となっているようだ。
 帰りは晩秋の山の景色を楽しみながら、元来た道を戻る。

   
渓谷は林道の遙か下 遙か下の流れ
   
ねじだる  ねじだる 
   
 宝剣岩  霧ヶ滝
   
 ゴルジェ 雷滝だったかな? 
   
忠兵衛峡の橋   忠兵衛峡
   

 駐車場まで帰り、最後の見所である牛ヶ滝と恋路峠へと向かう。牛が滝もなかなか見事である。恋路峠は現代的な名前だな。もとは小路峠だったとのこと。山間の展望は見事だ。手前に見える集落は中山道野尻宿で奥は木曽駒、宝剣辺りだろう。

 
牛ヶ滝 1 牛ヶ滝 2 
   
滝の下流 恋路峠展望

 これで全ての予定終了。一日それぞれ、半日コースのハイキングでしたが、トレーニング不足の老いぼれには丁度適当な運動でしたか。中津川で栗菓子を土産に買って帰りました。