めぐるとき

沈丁花一輪香りて春近し木蓮のつぼみまだかたけれど

馥郁と香りただよふ沈丁花弥生の月はおぼろに照りて

桜咲く春のよろこびかみしめぬこの惑星に人と生まれて

風に舞ふ桜花びら手にうけて呪文をひとつ唱へてみたりす

殺生石舞金剛の女体かな異次元世界にあそぶ心地す

飯盛の山のふもとに憩ひたり聞くは葉ずれと蝉の声のみ

暑きかなまた涼しといひつ日はすぎてそれとは知らず秋はきにけり

秋の末わづか見ぬ間の木木の葉は散りて寂しくなりにけるかも

嵐疾く暗き水面に鳥うかびとよめき泡だつ波と競へる

うらがれの芦の浜辺にかもなきていさりをすなる冬の夕暮れ

しんしんと凍れる寺の軒端よりくまなく降れる雪をながめつ

冬ごもり早寝の夜のまだあけず詠みちらしたる歌のいくばく

夜更け聴くカーペンターズ声澄みて憶ひはオンリーイエスタデイ

ひそやかにキリテカナワの歌ききてまどろみをりし春あさぼらけ

うたかたの恋のしらべにゆれうごく歌のちからのいやつよければ

いにしへの都に咲ける曼珠沙華あきの陽ざしにつややかに照る

秋澄みて月のさやけきこの夕べ心はしのに過ぎし日思ほゆ

 

 

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