旅路

バイロンのいにしへ詠へるシオン城湖に沈める夕日に映えぬ

朝日さすサンミケーレのテラスよりドゥオモの天蓋遙かにのぞむ

訪なひし牧場のきはの生垣のフランボワーズ口にふくみし

赤屋根のサンタバーバラ訪なへり港にいづれば夕陽しづみぬ

降りしきる雨にけぶれる杜のまち木木の青さの目にしみにけり

樓台の丘にそびゆる吉野ヶ里古代の森も雨にけむりぬ

光満つる相模海原すなどりの舟の群れゐぬ初島あたりに

梅の香に潮まじりたる綾部山日ざしもひともやはらかげにて

荒礒に貝ひろふ頬なでてゆく四国からの風はもう春

ハルニレの高きこずゑに風ふきて春待てるごと花咲きそろふ

西長門波にたゆたふやどかりの二つむつめるあかずながむる

みすずかる信濃渋の湯冬ごもり松より落つる雪にめざめぬ

さらさらとさらさらとふる粉雪を湯よりながむる山かひのやど

過ぎし日に一人越えにし雪のたわ飛騨への道をまた越えむとす

 

 

 

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