なき人へ

送り火の定めはかなくきえいりぬつみなき人のこひしかるらむ

戦ひに友失ひしわが父はわれみる映画をうとめるごとし

亡き父と登りしこともありにけり二上山をまた越えんとす

朝霧らふ二上山のいただきに大津の皇子はねむりたまへる

和泉より霧わきいづる峠道大和の野辺は夕日させども

丘の辺にいにしへの墓あまたありかへりみすれば王陵の谷

西行師ねむれる寺のわきの田の曼珠沙華は雨にうたれぬ

北国の薄き陽のもと街あるく花も草木も異国の風あり

北国の春の遅きに涙せりきみ葬むりて南へかへる

土ひねるときは無心にかへりゐていまなきひとのおもかげ偲ぶ

斑鳩のみ寺のしびに漂へる雲にあくがれし彼のひとなるか

瀬戸の海沖つ白波たつみれば逝きにし人のことの思ほゆ

 

 

 

 次のページへ 

 前のページへ 

 魁猿のホームページへ 

 禿羊のホームページへ