憶い出 −昔の歌


かくほどに人ぞ恋しき山の秋麗しき月を見るにつけても


みすずかる信濃の白き山々に凍れるごとく月さしにけり


波さわぐ三河の海に貝ひろう漁火遠く月は近くに


みちのくの早池峰の神結びたり子らに伝えよ遠野語りを


ぬばたまの黒きはだえに光りたるつぶらひとみに心ひかれぬ


波荒き常陸の海に降れる星燈台直下泡とくだけぬ


やわらげどいまだ冷たき春の海潮は満ちきぬ貝ひろう君


過ぎし日は開かれざりし汝が心なおまどいけり去年も今年も




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